インドの最高裁判所は「その他の後進諸階級(OBC)」向けの優先入学枠(定員の27%)を義務付ける中央政府教育機関留保法について、2007年3月 にOBCを定義する客観的なデータが1931年以降ないことなどを理由に指し止めを命じていましたが、2008年4月10日、この法律について「上澄み層」を除く社会的及び教育的に後進な階層に ついての留保を認めるとする判決をだしました。これをうけてインド連邦政府は20日、インド工科大学などを含む国公立の大学に対して従来の指定カーストに15%、指 定部族に7%の留保に加えて、「上澄み層」を除く「その他の後進諸階級(OBC)」に対する27%の優先入学を2008-09年度から実施するよう命じま した。
指定カーストや指定部族を対象とする公務員や教育機関への留保制度は、憲法にも明記され、彼らが差別(排除)されてきた歴史的背景から社会的にも概ね認 められてきました。指定カーストのように不可触民として差別や抑圧を受けてきた歴史はないものの、いわゆるカースト制度の中で下位に位置付けられる後進諸 階級については、憲法で「後進階級」に対して社会や教育面での優遇措置をとるよう規定するものの、「後進階級」の定義が明確でないこと、差別(排除)につ いても「不可触民」ではないこと、そして経済的政治的に大きな影響力を持つ集団(上澄み層)もあることなどから、教育機関に優先枠を設けることについては 議論がわかれていました。
今回の最高裁判決においても、カーストを基準とする留保制度の継続については疑問が提示され、カーストだけによって後進性を定義し、一律に留保枠を認め るのではなく、貧困、社会的後進性、経済的後進性などもその定義の基準になると最高裁長官が述べたほか、今回の27%の留保については10年の期限付きと するべきとする判事のほか、独立以来60年にわたって続いてきた留保制度が、当初望んでいた結果を導くのに効果的であったのかどうかについて政府に議論す るよう求めています。(2008年4月24日)
出所:
・Supreme Court of India, Case No:Writ Petition(Civil)265 of 2006,(英語)
http://www.judis.nic.in/
・“Implement OBC quota from 2008-09: Govt”, Times of India(20 Apr 2008)(英語)http://timesofindia.indiatimes.com/India/Implement_OBC_quota_from_2008-09_Govt/articleshow/2966028.cms
(2008年04月10日 掲載)