米国務省は、世界各国における性的搾取や強制労働などを目的とした人身売買に関する年次報告書を2001年以来公表していますが、08年6月4日に2008年版を発表しました。08年版は、153の国・地域を対象に、加害者訴追、被害者保護、予防の3要素を 柱として、(1)米国「人身売買被害者保護法」に基づく最低限の基準を十分に満たしている(ランク1=29カ国・地域) (2)同基準を十分には満たしていないが、それらを満たすためにかなり努力している(ランク2=70カ国・地域) (3)同基準を満たすためにかなり努力している一方で、成果が出ていないなど(ランク2監視対象国=40カ国) (4)同基準を満たしておらず、改善努力もしていない(ランク3=14カ国)と例年同様の4段階で評価しています。
それらに加え、情報不足などを理由にランク付けしていない17カ国の状況も含まれており、過去最多の合計170カ国・地域がカバーされています。 日本は、政府の人身取引関係省庁連絡会議を通じて改善施策に取り組んでいるものの、被害者の認知や保護のための努力が不十分であるとして、ランク2に位置 付けられています。 加害者の訴追に関しては、07年の性的搾取の伴う人身売買の立件数は11件(06年17件)で、有罪判決を受けたのは12人(06年17人)と、前年より 減少したと報告しています。日本はまだ包括的な人身売買禁止法を制定していないという課題に加え、強制労働を目的とした詐欺的な手段による労働者の募集を 法的に禁止していないと指摘されています。労働における搾取については、外国人研修・技能実習制度の問題が07年版で初めて取り上げられましたが、今回も 繰り返し述べられています。
被害者保護に関して、被害者の認知は05年の116人、06年58人、07年43人と減少していることなどから、事態が地下に潜行しているのではないか との専門家の意見を取り入れたうえで、政府の努力がまだ足りないとしています。
また、被害者は各都道府県にある女性相談所に保護されているものの、彼女たちの大半が母語の話せる訓練された心理カウンセラーに十分なアクセスができてい ないといった課題が述べられています。
今回の報告書では、こうした実態を背景に、公式に被害者認知の手続きを確立・実施することなどについて勧告しています。
日本は、この年次報告書の2004年版において、同年ランク2のなかに新設された「監視対象国」として分類されましたが、2005年以降は通常のランク 2に位置付けられています。「先進国」の大半は、ランク1に分類されています。(2008年6月5日)
出所:
・ “Trafficking in Persons Report 2008” U.S. Department of State (英語)
http://www.state.gov/g/tip/rls/tiprpt/2008/
参考:
米国務省の「2007年人身売買報告書」公表される~日本の外国人研修生制度の問題指摘」ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ (2007年6月)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section2/2007/06/2007-1.html
(2008年06月03日 掲載)