11月1日、ISO(国際標準化機構)から、社会的責任ガイダンス規格であるISO26000:2010が発行されました。ISOでははじめての取り組みとなるマルチステークホルダーアプローチにより、90を超える国と40を超える地域組織から、消費者、政府、産業界、労働者、非政府組織の各ステークホルダーの代表が参加し、ISO内部で具体的に検討が開始されてから約8年の歳月をかけての発行となったものです。
いわゆるCSR(企業の社会的責任)の国際的な標準が網羅された内容となっており、数多くの関係者の議論への参画と長い年月をかけた策定プロセス自体が、その内容の正当性と説得性を担保するものとなっていますが、企業(Corporations)だけでない幅広い組織の社会的責任(SR)を視野に入れたものとなっていることが大きな特徴です。また、ISO9001や14001のような認証のための規格でないことも特徴となっています。
もとよりCSRでは人権に関する取り組みが重要な要素ですが、ISO26000でも、「説明責任」「透明性」「倫理的な行動」「ステークホルダーの利害の尊重」「法の支配の尊重」「国際行動規範の尊重」とともに、「人権の尊重」が「社会的責任の原則」の一つに挙げられているほか、「組織統治」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティ参画及び開発」とともに、「人権」が「社会的責任の中核主題」の一つとして記述されています。「人権とは、生得的で奪うことはできず、普遍的、不可分で、相互依存的なもの」であり、「組織は、人権(その影響力の範囲も含めて)を尊重する責任を負う」という叙述からはじまるその内容は、多くの示唆的な内容を含んでいます。
参考:ISO 26000 – Social responsibility
http://www.iso.org/iso/iso_catalogue/management_standards/social_responsibility.htm
(2010年11月02日 掲載)