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法制審が「ハーグ条約」締結に向けた要綱を法相に提出(2月7日)

日本政府が「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」(「ハーグ条約」)の締結に向けた国内手続きを関係省庁が審議していますが、法務大臣の諮問機関である法制審議会「ハーグ条約(子の返還手続関係)部会」が2012年1月にまとめた要綱案を、2月7日に同総会で採択し、小川法相に答申しました。
 
「ハーグ条約」は、婚姻関係(おもに国際結婚)が破綻した父母の一方が無断で子を国外に連れ去った場合、原則として子を元の国に返還し、どちらが養育するかを決めるためのルールを定めた多国間条約で、2011年12月時点で87カ国が加盟しています。
 
今回の要綱では、日本に連れ帰られた子を条約の原則通りいったん元の国(外国)に返還するかどうかを決める手続きを東京と大阪の2家裁で行うと定めています。裁判所が返還拒否を考慮できる理由として、児童虐待やドメスティック・バイオレンス(DV)の恐れがあるケースを明記しています。
 
 これを受けて、2011年2月に意見書を提出していた日本弁護士連合会は、「児童虐待やドメスティック・バイオレンスが認められる事案に対する配慮、子の意見聴取、返還手続に関する規定の整備などについては、要綱や論点まとめに一定程度盛り込まれたものと評価できる」としつつ、制定する法律に「子の最善の利益を尊重すべきだ」と規定することや、加盟前に在外邦人への十分な情報提供や公的支援制度の充実などを要請する会長声明を同日発表しました。
 
 政府は3月中に法案を提出し、今国会で条約承認を目指しています。しかし、他の重要課題も多いことから、具体的な見通しは立っていないもようです。
 
参考:
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」を実施するための子の返還手続等の整備に関する法制審議会の要綱採択に対する会長声明(日弁連)
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120207.html
 
わかる!国際情勢「子の連れ去りをめぐるハーグ条約と日本」(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol82/index.html
 
日米シンポジウム「子どもの最善の利益と親の権利から、国境を越えた子の連れ去りを考える」〜「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」への加盟をめぐる課題
国際人権ひろば No.100(2012年01月発行号)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/sectiion3/2012/01/post-155.html

(2012年02月09日 掲載)