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「朝鮮学校の『高校無償化』排除は民族差別」-NGOが国連人種差別撤廃委員会に要請(2月27日)
沖縄からの要請に続いて、「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」、「在日本朝鮮人人権協会」、「反差別国際運動日本委員会」(IMADR-JC)の3団体は2012年2月27日、日本政府が朝鮮学校に「高校無償化」を適用せず、また、5つの都府県が朝鮮学校への補助金を停止あるいは削減している現状が、人種差別撤廃条約第5条(e)(ⅴ)の「教育権の平等な保障」に違反しているとして、国連人種差別撤廃委員会に、日本政府に勧告するよう概要以下のような要請文を提出しました。
「2010年4月、日本政府は、家庭の状況に関わらず、全ての意志ある高校生等が高校段階の教育を受けることができるようにすることを目的として、高校無償化法を施行し、日本にある公立高校の授業料を徴収しないこととし、私立学校、そして外国人学校の生徒にも、公立高校授業料に相当する金額を支給するとした。法制定以降、すでに33の外国人学校の生徒たちが就学支援金を受給したにも関らず、朝鮮学校の生徒たちは未だ適用から排除されており、受給していない」
「委員会が、2010年2月の日本報告審査の際に、高校無償化法の制定に際し、朝鮮学校を排除するべきことを提案している何人かの政治家の態度につき、子どもの教育に差別的効果をもたらす行為として懸念を表明し、『教育機会の提供において差別がないよう確保すること、ならびに、締約国の領域内に居住する子どもが就学および義務教育の修了にさいして障害に直面することのないよう確保すること』を勧告した。しかし、日本政府はその勧告を完全に無視している。日本政府は朝鮮民主主義人民共和国と日本間の外交問題を理由として、朝鮮学校の子どもたちを差別している。朝鮮学校の生徒たちのみ授業料への支援がないために、朝鮮学校への進学や進級を断念せざるをえない子どもも多く、マイノリティの教育権が侵害されている」
さらに、「従来から日本政府は外国人学校に一切の財政支援を行っていないが、朝鮮学校が存在するすべての都道府県は補助金を支給してきた。しかし、高校無償化からの朝鮮学校はずしに力を得て、5つの都府県(大阪、東京、埼玉、千葉、宮城)が補助金を停止または削減させるという事態を引き起こすに至っている。大阪府の場合、補助金の停止により10校ある学校のほとんどは、4ヶ月の教職員の給料遅配などの財政危機に陥っている」と状況を説明しています。
そのような事態を、特定の民族的マイノリティに対する継続的な差別であると憂慮して、人種差別撤廃委員会に6項目の要請をしています。
a) 日本政府に対し、朝鮮学校の「高校無償化」からの排除は特定のマイノリティに対する明らかな差別であり、条約違反であることを明確に示すこと
b) 日本政府に対し、この問題に関する委員会からの2010年3月の勧告第22注1パラグラフ履行のために、その後とられた措置について直ちに報告するよう要求すること
c) 日本政府に対し、朝鮮学校の「高校無償化」からの排除を直ちに見直し、その対象校とするよう要求すること
d) 仮に日本政府が朝鮮学校の「高校無償化」からの排除を継続する場合は、その理由を明示するよう要求すること
e) 日本政府に対し、朝鮮学校への補助金の削減・停止をとりやめ、少なくともこれまでどおりの補助金を支給するよう、地方自治体と共に必要な措置を取ること、かつ、日本の学校との平等取り扱いの観点から、補助金増額も検討するよう要求すること
f) 日本政府に対し、朝鮮学校をはじめとする外国人学校に対する制度的差別を見直し、日本の学校と同等の支援を行うよう法を整備し、マイノリティの教育権を保障するよう要請すること
<注1> 22. 委員会は、市民でない者に対する差別に関する一般的な性格を有する勧告30(2004年)に照らし、締約国に対し、教育機会の提供において差別がないよう確保すること、ならびに、締約国の領域内に居住する子どもが就学および義務教育の修了にさいして障害に直面することのないよう確保することを勧告する。この点に関して、委員会は、また、締約国が、外国人のための多様な学校制度の調査研究や、国の公立学校制度の枠外に設置された代替的な制度が望ましいかどうかの調査研究を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団が自己の言語を用いた、または自己の言語の指導を受ける充分な機会を提供することを検討すること、および、教育における差別を禁止するユネスコ条約への加入を検討するよう奨励する。