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米国務省、世界186カ国・地域の「2012年人身売買報告書」を発表
米国務省は6月19日、世界186カ国・地域の人身売買の実態や政府による対策をまとめた「2012年人身売買報告書」を発表しました。同省は2001年以来、毎年6月にこの年次報告書を公表しています。報告書は、対象国ごとに人身売買に対する政府の施策を4段階に分けて評価しています。「2012年報告書」では、最上位の評価(Tier1)をされた国は33か国、2番目のランク(Tier 2)は93、さらにTier 2 のなかで要監視のウォッチ・リストにあがっているのが42、最下位のTier 3が17カ国でした(政府が機能していないソマリアに関しては評価なし)。
日本については、「政府は努力をしているものの、人身売買撤廃のための最低基準を満たしていない」として2番目のランクでした。ウォッチ・リストにあげられた2004年の12月に政府が「人身取引対策行動計画」を策定して以降、05年から8年連続で2番目にランク(Tier 2)され続けています。G8のなかでTier1でないのは日本とロシアのみです。
「日本報告」(
翻訳全文)の概要は以下のとおりです。
中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他のアジア諸国からの男女の移住労働者が強制労働の被害にあっている。また、東アジア、東南アジア、南米、そして数年前までは東欧、ロシア、中米などから、女性や子どもたちが雇用目的や偽装結婚で来日し、売春を強要されたりしている。
売春を強要される被害者は、多額の借金を負わされる上、生活費や医療費、その他必要経費を請求され、束縛状態に置かれている。そのような借金に加えて、「罰金」が加算されることもあり、売春宿の経営者による「負債」の計算方法は不透明である。
一方、日本人男性は、長年にわたり東南アジア(一部、モンゴルへも)における児童買春ツアーの主要な顧客である。
日本政府は、外国人技能実習制度において、強制労働を示す事例が発覚しているにもかかわらず、強制労働の存在を公式に認めていない。過去18年間で誰一人として、強制労働の被害者であると認定されていない。
日本政府は2011年の成人女性の性的人身売買の被害者として45人を認定し、619人を児童買春の被害者として認知している。
日本には人身売買の被害者専用の公的シェルターはないことから、おもにDV被害者が保護される女性相談所に一緒に保護されていることから、提供されるサービスには制約がある。また、男性被害者のシェルターも設置されていない。
2005年の刑法改正で、人身売買罪を新設したものの、狭い定義に留まり、「国連人身売買禁止議定書」に沿ったものではない。
報告書は、以上のような現状に対して、いくつもの勧告を提言しているが、その筆頭には、あらゆる形態の人身売買を禁止するための包括的な人身売買禁止法の制定すべきであると述べている。
参考:
日本報告書の翻訳(ポラリスプロジェクトジャパン)
参照:
2011年に保護された人身取引の被害者は女性25人-警察庁(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ)
2011年に保護または帰国支援された人身取引の被害者は21人-法務省入管局(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ)