6月18日から7月6日まで、国連人権理事会の第20会期が開催され、紛争が続くシリアの状況などを審議したほか、平和の権利に関する宣言を起草する作業部会の設置や、ベラルーシ、エリトリアの人権状況に関する特別報告者を新たに設置することを決めました。
平和の権利について、人権理事会は2008年の第8会期において、平和の権利を取りあげることを決議し、第14会期においてこの権利に関する宣言案の起草を諮問委員会に付託することを決め、今会期には諮問委員会からの宣言案が提出されていました。理事会は、諮問委員会の宣言案をもとに、平和の権利に関する宣言案をさらに検討し、確定する政府間作業部会を設置し、2013年の第22会期前に開催することを決議しました。この権利については、今まで認められていない、新しい権利であると反対する国もあり、決議は賛成34、反対1、棄権12で採択されました。
人権理事会は、2011年の3回の特別会期を含め、シリアの人権状況を取りあげ、8月には調査委員会を設置していました。今会期に先立ち、6月1日にも同国に関して特別会期を開催し、特にアル・ホウラにおける女性や子どもを含む民間人の殺害を非難する決議を採択しました。今会期では、調査委員会の代表による6月にシリアを訪問した際の報告が行われ、4月の停戦合意が守られず、状況がさらに悪化していることが伝えられました。理事会は、民間人、特に子どもに対して行われる人権の重大な侵害を非難し、今後もこの問題を取りあげることを決議しました。
ベラルーシでは、2010年12月に行われた大統領選挙以降、反対派に対する迫害、拘禁、拷問などの虐待、メディアに対する規制などが続いているとして2011年の第17回理事会は、人権の保障と、侵害の捜査、責任の追求を行うことなどを求めていました。しかし、決議案に含まれていた特別報告者の任命は口頭で修正され、人権高等弁務官が同国の人権状況について報告を要請する決議となりました。今会期に提出された報告の作成に当たり、人権高等弁務官事務所の調査チームはベラルーシに入ることが認められず、報告は人権条約機関や欧州評議会、欧州安全保障協力機構(OSCE)などの地域機関やメディア、NGOからの情報をもとに作成されました。報告は大統領選以降、反政府デモの参加者の逮捕、訴追などの集会の自由の制限、野党や反対派の逮捕や拷問などの迫害、メディアの規制などが行われていることをあげ、また、死刑判決を受けた人たちが自由権規約委員会に申し立てている間に死刑が実施されたことも報告されています。報告は、政治犯を即時に釈放すること、拷問などの訴えを捜査することなどの勧告を行っています。理事会は、同国政府に対して、それらの勧告を実施するよう促し、同国に関する特別報告者を任命することを決議しました。
その他にも、理事会は、人権高等弁務官事務所に対して、良心的兵役拒否に関して各国の法律や政策などを分析する報告を要請する決議、恣意的拘禁に関する作業部会に、自由を奪われた人に対する救済や手続に関する基本原則や方針案の作成を要請する決議、女性や子どもの無国籍となってしまうことを防止する国内法を導入することを各国に要請する決議などを採択しました。
出所:
Human Rights Council concludes twentieth regular session, OHCHR 7月6日付、http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=12329&LangID=E
第20回人権理事会 Documentation, OHCHR http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session20/Pages/Documentation.aspx
参考:
「第19回国連人権理事会、スリランカ、シリアの人権状況、人権と環境に関する独立専門家について決議」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2012年4月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2012/04/19.html
『国際人権ひろば』99号(2011年09月)特集:平和の権利
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section1/2011/
(2012年07月11日 掲載)