国際刑事裁判所(ICC)は7月10日、コンゴ愛国者解放戦線の元指導者トマ・ルバンガ被告に対して、14年の刑期を決定しました。同容疑者は15歳未満の子どもを兵士として敵対行為に参加させたことなどで3月に有罪判決を受けていました。検察は30年を求刑していましたが、裁判所は同被告に対して、加重する要因があることを検察が示していなかった一方、被告が裁判審理に対して協力的であったことから軽減を認めて、14年としました。2006年の逮捕からの拘束期間が差し引かれるため、同被告は後8年の刑期を務めることになります。本審理の3人の裁判官のうちオディオ・ベニト裁判官は多数意見に対して、被害者となった子どもに対して残虐な処罰や性的虐待が行われていたなどの加重要因を考慮すべきだったと反対意見を付しています。
7月20日には、国際司法裁判所(ICJ)が、セネガルがハブレ元チャド大統領を拷問や人道に対する罪で起訴、あるいはベルギーに引き渡す義務を果たしていないというベルギーの訴えについて、セネガルがハブレ氏を起訴するか引き渡さなければならないという判決を出しました。
ハブレ元大統領は1982年に就任しましたが、1990年に反政府軍に追われ、セネガルに亡命していました。在任中、拷問、超法規的殺害や強制失踪などの人権侵害を行ったとして、滞在先のセネガルとベルギーで2000年に訴訟を提起されていました。当初、セネガルの訴訟については同国の裁判所に管轄権がないと退けられていました。また、ベルギーでは、チャド出身のベルギー国籍の被害者などが訴訟を開始し、同国は、2005年セネガルに対してハブレ氏の引き渡しを要請しました。一方、拷問等禁止条約に基づいて設置された拷問禁止委員会に対して個人通報の申立てが行われ、委員会は2006年、同国に対して、拷問などの犯罪について管轄権を設定する措置をとっておらず、ハブレ氏を起訴するか、あるいはその代替として引き渡しの要請がなされているにもかかわらず、要請に応じていないとして条約の5条2項、7条1項に反しているという見解を採択していました。
今回の判決でICJは、セネガルがハブレ氏の犯罪について捜査を行わなかったことや起訴の手続をとらなかったことにより、拷問など禁止条約に違反したとして、引き渡ししないのであれば遅滞なく起訴の手続をとらなければならないと判断しました。
チャドでは、現在も反政府武装グループとの紛争や民族間の対立が続き、武装グループが子どもを兵士に徴募しているとも言われています。(7月27日)
出所:
Thomas Lubanga Dyilo sentenced to 14 years of imprisonment、7月10日付ICCプレスリリース http://www.icc-cpi.int/menus/icc/press%20and%20media/press%20releases/pr824
Decision on Sentence pursuant to Article 76 of the Statute
http://www.icc-cpi.int/menus/icc/situations%20and%20cases/situations/situation%20icc%200104/related%20cases/icc%200104%200106/court%20records/chambers/trial%20chamber%20i/2901?lan=en-GB
UN world court rules Senegal must prosecute ex-Chadian leader or extradite him。7月20日 UN News Centre http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=42526&Cr=court+of+justice&Cr1=
International Court of Justice http://www.icj-cij.org/homepage/index.php?lang=en
参考:
「国際刑事裁判所が初めての判決」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(12年3月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2012/03/post-75.html
(2012年07月30日 掲載)