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強制立ち退きに瀕するマニラの「スモーキーマウンテン」の住民6,500人
国際協力に取り組むNPO法人「アクセス-共生社会をめざす地球市民の会」(本部:京都市)によると、フィリピン政府は2011年11月、マニラ市にある「スモーキーマウンテン」というゴミ投棄場を民間企業に売却する方針を打ち出し、立ち退き対象世帯を把握するための住民台帳がすでに作成されたといいます。土地を購入する予定の民間企業は、港湾整備や旅客ターミナルの建設といった再開発を計画しています。しかし、再定住地や補償金など移転住民への補償は明らかにされていないそうです。
「スモーキーマウンテン」は、マニラ市内の海に面したトンド地区にある東南アジア最大のスラムのひとつで、マニラ首都圏から毎日運び込まれる未分別のゴミの投棄場になっています。そこには1,800世帯・6,500人が暮らし、リサイクル可能な空き缶やビン、鉄などを収集し、仲介業者からわずかな現金を得ることを生活の糧としています。コミュニティ内には幼稚園や礼拝堂も複数あるといいます。
「スモーキーマウンテン」の路地はぬかるみ、無数のハエが飛び交い、自然発火したゴミの煙などで喉が痛くなるというほど住環境は「劣悪」です。しかし、他に選択肢のない住民にとっては「かけがえのない暮らしの場」にほかなりません。
立ち退き計画に対して、住民組織が「スモーキーマウンテン」の居住環境の改善を求めて反対運動に立ち上がりました。しかし、政府と企業の意を受けた一部の住民が、反対運動に対して銃で威嚇するなどの妨害行為に出るようになり、2012年7月22日、住民組織のリーダーで、「アクセス」の同地での保健衛生や女性プログラムのボランティア・スタッフとして活動していたマリルー・ヴァリエさん(43)を息子(16)の目前で銃殺しました。容疑者に対する逮捕状が出ていますが、8月13日時点でまだ逮捕されておらず、容疑者と思われる人物から脅しの携帯メッセージが関係者のもとに届いているそうです。
そのような事態を受けて、NPO法人「アクセス」は住民組織や犠牲者の遺族と協力しながら、ベニグノ・アキノⅢ大統領に立ち退きの撤回と住環境の改善を求める「6500人の暮らしを守る」署名キャンペーンを始めています。
スモーキーマウンテンの立ち退き(NPO法人アクセス)
(ネット署名のウェブサイト)
<参考>
国際人権ビデオシリーズ4
「ゴミに暮らす人びと~開発・環境・人権を考える~」(ヒューライツ大阪)