カンボジアで開催された第21回東南アジア諸国連合(アセアン)において、11月18日、アセアン人権宣言が採択されました。
この宣言は、2009年につくられた、アセアン政府間人権委員会(AICHR)が起草したものです。
宣言には40条の規定があり、一般原則、市民的・政治的権利、経済的・社会的・文化的権利のほか、開発の権利、平和への権利と人権の伸長・保護における協力の章があります。
一般原則では、すべての人が生まれながらにして尊厳と権利において自由と平等であること(1条)、人種、ジェンダー、年齢、言語、宗教、政治的または他の意見、民族的または社会的出身、経済的地位、出生、障害または他の地位などいかなる区別もなく、宣言にあげられる権利や自由をもつこと(2条)、すべての人が法の前に人として認められ、差別なく法の保護を受ける権利があること(3条)などがあげられています。一方、権利の享有が、他の人、共同体および社会に対する責任を果たすことと均衡していなければならないとしていること(6条)、人権の実現が異なる政治的、経済的、法的、社会的、文化的、歴史的および宗教的背景を念頭において、地域的および国民的文脈で考慮されなければならないこと(7条)、人権の行使が他の人の権利の保障のみを目的とし、国の安全保障、公的秩序、衛生、公共の安全、公の道徳や民主的社会における人の一般的な福利の公正な要請を満たす、法律による制限に服するとしていること(8条)など、人権の保障が国際的な人権基準よりも狭められる懸念があるとされる規定も含まれています。
これらの点については、採択前から地域および国際的な市民団体が、生まれながらにしてあるはずの人権の享有に条件を付け、人権の普遍性を損なうとともに、国際基準よりも広範囲の制限を認めるものとして、批判していました。
宣言は、そのほか、法律および国際的な合意に基づき、庇護を求め、受け入れられる権利、子どもや若い人の経済的社会的搾取の禁止、衣食住のほか、医療や必要な社会サービス、安全な飲料水と衛生、安全で持続可能な環境の権利を含む十分な生活水準の権利、HIV/AIDSを含む感染症に苦しむ人に対する差別されない環境などがあげられています。
宣言は起草過程において、起草案が公表されず、市民社会との協議がないと多くのNGOから批判されていました。直前にも、インドネシアを訪れたピライ国連人権高等弁務官が、市民団体などの懸念や批判に言及し、すべてのステークホルダーが参加して、国際人権基準に十分にそった案をつくるよう起草にもっと時間をかけることを求めていました。(11月19日)
出所:
アセアン人権宣言 http://asean2012.mfa.gov.kh/?page=detail&article=328&lg=en
Civil society rejects flawed ASEAN Human Rights Declaration 11月15日(Forum-Asia) http://www.forum-asia.org/?p=15601
Statement by the High Commissioner for Human Rights at the Bali Democracy Forum 11月7日 (OHCHR)http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=12752&LangID=E
参考:
「アセアン人権宣言起草過程に対してNGOが共同声明を発表」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2012年5月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2012/05/ngo-1.html
「アセアン政府間人権委員会が発足」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2009年10月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2009/10/post-66.html
(2012年11月19日 掲載)