第67回国連総会は、12月20日、北朝鮮やシリアなど特定の国の人権状況、死刑、女性の性器切除廃止など人権に関する決議を採択しました。
世界的な高齢化の流れに対し、国連ではこれまで経済社会理事会で高齢者の権利や尊厳について取りあげられていたほか、高齢者問題世界会議が開催され2002年の第2回会議ではマドリード国際行動計画が採択されています。しかし、総会は既存のメカニズムでは高齢者の人権が十分に保障できていなかったとして、2010年に設立されている高齢化に関する作業部会において、高齢者の権利と尊厳を保障する国際的な法文書に含まれるべき内容の提案を作成することを決議しました。作業は、2013年の作業部会の第4会期から開始します。（A/RES/67/139）また、第2回高齢者問題世界会議のフォローアップとして、各国に高齢者のエンパワメント、高齢化の問題に対応する能力の向上など取り組むよう促す決議も採択しています。（A/RES/67/143）
文化的、宗教的などの非医学的理由によって行われる、女性の性器切除は主に15歳未満の少女に対して行われ、施術の際の危険だけでなくその後の健康に深刻な影響を及ぼし得ることがいわれてきましたが、一方で文化や宗教的伝統として介入すべきではないと主張されることもありました。世界保健機関（WHO）は、世界でこの施術を受けた女性と少女が約1億4千万人もおり、WHO、ユニセフ、国連人口基金などがその廃止に向けて取り組んでいました。第67回総会での決議は、総会として廃止を求める初めての決議であり、第56回女性の地位委員会からの勧告を受け、アフリカの諸国が中心となって提出されました。各国に少女、少年、女性、男性、政府関係者、共同体や宗教的指導者、教育関係者、医療関係者、メディアなどあらゆるステークホルダーの関与のもと、女性の性器切除を含む少女に影響を及ぼす有害な習慣や態度を撤廃するための啓発、教育を行うこと、この習慣の撤廃のコンセンサスを促進するために啓発、教育活動を制裁措置によって補完すること、施術を受けてしまった女性や少女の社会的、心理的支援やケア、健康改善に向けた措置などをとることなどを求めています。（A/RES/67/146）
総会は死刑について2年ごとに取りあげています。今会期では、各国に死刑判決を受けた人の最小限の保護に関する国際基準を尊重すること、死刑判決を受けた人の数、判決の執行数などを公表すること、廃止に向けて執行のモラトリアムを実施することなどを求める決議を採択しました。（A/RES/67/176）
特定の国の人権状況を対象とする決議案について、これまでは対象の国だけではなく、国別の決議自体に反対する国があり採決がとられていたのですが、今会期、北朝鮮の人権状況に関する決議では、広範で重大な人権侵害や、未解決の拉致や強制失踪の問題、食糧不足を含む人道的な危機状態に強い懸念を表明する決議がコンセンサスで採択されました。中国、シリア、ベネズエラおよびキューバは採択後、コンセンサスから離脱を表明し、北朝鮮は決議を認めないと述べています。（A/RES/67/181）
特定国に関する決議としては、シリアについて、郡や政府側武装集団の市民に対する重兵器の使用や爆撃、殺害を非難し、人権侵害や攻撃を直ちに停止し、国際法上の義務を遵守することや、すべての当事者にあらゆる形態の暴力を終了させることを呼びかける決議（A/RES/67/183）、イランに関する決議などが採択されました。
また、24日には、ミャンマーにおける人権状況の進展、政治改革への動き、政治犯の釈放などを歓迎し、今後も改革、改善を続けるよう求める一方、カチン州での武力紛争とそれに関わる人権や人道法侵害、ラカイン洲におけるロヒンギャの人びとの状況などに懸念を表明する決議もコンセンサスで採択されました。（A/67/233)
そのほかには、極度の貧困と人権、超法規的、恣意的殺害、宗教や信仰の自由などの決議が採択されています。
出所：
General Assembly Strongly Condemns Widespread, Systematic Human Rights Violations in Syria, as it Adopts 56 Resolutions Recommended by Third Committee 国連総会12月20日付プレスリリースGA/11331 http://www.un.org/News/Press/docs//2012/ga11331.doc.htm
第67回総会決議 http://www.un.org/en/ga/67/resolutions.shtml
（2012年12月27日 掲載）