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安倍首相が「ハーグ」条約の早期締結を日米首脳会談で表明(2月22日)、NGOが慎重な検討を求める要望書を政府に送付
自民・公明両党は、2月19日に開かれた与党政策責任者会議で、国際結婚などが破綻した際に、夫婦の一方が、相手の承諾を得ずに子どもを国外に連れ出した場合、もう一方が返還を求めれば、原則として元の国に戻すことを定めた「ハーグ条約」(国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約)の承認と関連法案について了承しました。これまで、日本人配偶者による連れ去りが相次いでいるとする米国などが、日本の早期加盟を強く求めてきていました。
安倍首相は2月22日、米国のワシントンで行われたオバマ大統領との首脳会談で、「ハーグ条約」及び条約実施法の国会提出を目指し、与党内プロセスを終了したことを説明し、国会での承認が得られるよう取り組んでいく旨を述べました。政府が3月をめどに両案を国会に提出する見通しとなっています。
ハーグ条約は、一方の親による国境を越えた子の「連れ去り」が起きた際、子の監護に関する審議は子が住んでいた国(常居所国)に戻して判断を行うこと、国境を超えた面会交流を確保するための審理を迅速に行うことを目的とした条約です。2013年2月現在、89カ国が加盟しており、日本はG8諸国のなかで唯一の未加盟国です。
一方、夫による家庭内暴力(DV)の被害を受けた日本人女性が子と共に帰国した後、同条約によって子の返還請求を受けることへの懸念が与党議員のなかにもあるといいます。
また、国際結婚により日本に定住する移住(外国人)女性たちの支援に取り組むNGOなどのネットワークである「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」は2月19日、「国際結婚等の破綻により子どもを連れて国境を越える女性たちの多くは、夫からDVや子どもの虐待などのやむを得ない事情を抱え、逃げてきているケース」であるという活動上の経験に基づき、「子を返還することを原則義務付けるハーグ条約に日本が加盟した場合、DV被害の移住女性や虐待を受けた子の利益を著しく損なう深刻な懸念がある」という観点から、「子の返還か返還拒否か、どちらが子の利益により適合的かを審理の対象とすべき」であるとして、「現在検討されている国内関連法案についても、慎重な検討を」という要望書を政府および主要政党に送付しています。
日米首脳会談概要(外務省)