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米国連邦最高裁判所、多国籍企業の国外での人権侵害に対する管轄権を制限

 4月17日、米国連邦最高裁判所は、ロイヤル・ダッチ・シェルがナイジェリアで1990年代に住民の拷問や処刑に関わったとして外国人不法行為請求権法(Alien Tort Claims Act)の下で訴えられた事件で、この法律が原則として国外で適用されないと判断しました。
ロイヤル・ダッチ・シェル社は関連会社やナイジェリアの現地会社などとニジェール・デルタにあるオゴニランドにおいて50年代から石油採掘・生産を行っていましたが、石油事業による環境破壊に対する住民の反対運動が起り、90年代それに対してナイジェリア政府が軍により鎮圧しました。その際、多くの住民が殺害され、逮捕され、拷問を受け処刑されたと言われています。本件では拷問を受けた後に処刑された活動家の妻が原告の中心となり、同社が、軍の派遣を要請し、鎮圧の物資の支援など非人道的行為に加担したと訴えていました。
 本判決は、外国人不法行為請求権法が米国外で行われ、被害者や加害者が米国人・法人ではない事例に適用されるかどうかについて、立法により明白な域外適用の意図が示されていなければ法律の解釈の原則である域外不適用の推定が働くとして、その推定を覆すためには、被告企業が米国内に事務所を有しているなどよりも相当な米国との関連性がなければならないとして原告の訴えを退けました。
 アムネスティ・インターナショナルは、本判決が人権侵害の被害者の米国の裁判所へのアクセスを狭めるという声明を出しています。
 1789年に制定された外国人不法行為請求権法は、国際慣習法や米国の批准した条約違反による不法行為について米国の裁判所が管轄権を有する、と規定する法律ですが、近年、米国外で行われた外国の政府職員などによる拷問や非人道的行為、多国籍企業など外国の企業による人権侵害などを米国で訴える根拠として使われています。オゴニランドの活動家・作家で、同じく拷問を受けた後処刑されたケン・サロ・ウィワの遺族などによる訴えでは、2008年、遺族や住民に対して合計155万ドルの支払いなどを含む和解が成立しています。また、ミャンマーの天然ガス・パイプライン建設をめぐる強制労働などの非人道的行為への関与が同法の下で訴えられていた事件も原告に対する補償の支払いや住民支援を含む和解が成立しています。
 一方、ナイジェリアのオゴニランドを含むニジェール・デルタの環境破壊については、さらに英国やオランダなどでも訴訟が提起されています。

出所:
Kiobel v. Shell Petroleum, 10-1491 (Supreme Court of the United States) http://www.supremecourt.gov/
 
US: Supreme Court ruling on Shell in the Niger Delta severely limits access to justice in human rights cases, April 17, 2013 (Amnesty International) http://www.amnesty.org/en/for-media/press-releases/us-supreme-court-ruling-shell-niger-delta-severely-limits-access-justice-hu

参考:
「ミャンマーにおける人権侵害関与をめぐるユノカル社事件が和解合意する」ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ(2005年1月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section2/2005/01/post-48.html

(2013年04月18日 掲載)