2011年に国連の人権理事会で採択、承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、国連を通じてのグローバルな広がりに加え、アセアン(ASEAN、東南アジア諸国連合の略)といった地域的機関を通じても広がりを見せています。
2012年11月にアセアン人権憲章が採択されましたが、その第1次草案ではCSRに関する規定があった(最終的には削除)など、ビジネスと人権に関心が寄せられてきました。アセアン政府間人権委員会は、アセアン憲章(2007年採択)に基づき2009年に発足しました。アジア地域では初めての地域的人権機関となります。
指導原則への注目として、アセアン政府間人権委員会は初のテーマ別調査としてビジネスと人権をテーマに選びました。この調査は、指導原則に則ったアセアン企業ガイドラインをめざしてのものです。委員会は、アセアンの非営利研究機関である人権リソースセンターや、ASEAN CSRネットワーク、ASEAN基金などと連携しながら作業を進めています。なお、調査の進捗情報などについて十分に情報公開されていないと市民社会から批判が出ています。
この動きのなか、人権リソースセンターは、2013年5月16日に『アセアンにおけるビジネスと人権:基礎研究』を発表しました。アセアン各国の研究者を巻き込んでの調査であり、報告書は約500頁にも及びます。アセアン10ヵ国が、指導原則の第1原則である「国家の保護義務」をどのように実現しているか、その法政策の現状と課題をまとめています。加えて、センターでは、指導原則に基づいた報告および保証のグローバル基準の確立を目指すプロジェクトも始まっており、今後の動向から目が離せません。
菅原絵美(大阪大学大学院国際公共政策研究科特任研究員)
出所:“Civil Society Statement on Corporate Accountability in ASEAN”(Nov. 13, 2012)
http://www.fidh.org/Civil-Society-Statement-on-12483
人権リソースセンター(Human Rights Resource Center)“Developing Global Standards for the Reporting and Assurance of Company Alignment with the UN Guiding Principles on Business and Human Rights”
参考: 「アセアン政府間人権委員会が発足」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2012/11/post-81.html
「『アセアン政府間人権委員会』の役割と東北アジアにおける可能性」
ヴィティット・ムンタボーン(Vitit Muntarbhorn)、国際人権ひろば No.90(2010年03月号)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/sectiion3/2010/03/post-95.html
(2013年07月17日 掲載)