10月2日、英国のバークレイズ銀行、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)、スイスのUBS銀行、クレディ・スイス、オランダの金融大手のING、イタリアのユニクレジットといった世界有数のメガバンクのグループ(スイスのトゥン<Thun>で会合を開いたことからThunグループと呼ばれている)は、「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、「国連指導原則」)をより良く理解し、金融事業において適用するためのディスカッションペーパー『指導原則:銀行のための解釈』を発表しました。
Thunグループは、2011年10月に国連指導原則を支持・実践することを宣言する署名付きのステートメントを発表しており、今回のペーパーは、国連指導原則の第二の柱である「企業の人権尊重責任」(第16-21原則)の実践に焦点を当てたものになっています。ペーパーを作成する至った背景として、1、OECDや国際金融公社(IFC)が国連指導原則を取り入れていること、2、EU(ヨーロッパ連合)のCSR新戦略(2011-2014年)のなかですべての欧州企業(この「欧州企業」は、欧州に拠点がある多国籍企業とは区別されていますが、詳しい定義は示されていません)およびEU加盟国に指導原則を実施することが求められていること、3、2012年4月に米・EU大西洋経済委員会が対外投資についてOECD多国籍企業行動指針の実施を促進することに合意したことを挙げています。
金融機関を対象としたCSRの取り組みには、前述のOECD多国籍企業行動指針やIFCサステナビリティ枠組に加えて、国連責任投資原則(PRI)、赤道原則(エクエーター原則)などがありますが、国連指導原則の内容を導入するために指針や原則を改定したり、また既存の取り組みと指導原則を結びつけるセミナーを開催したりするなど、国連指導原則への注目が高まっています。
菅原絵美 (大阪大学大学院国際公共政策研究科特任研究員)
出所:
The Thun Group of Banks, “UN Guiding Principles on Business and Human Rights: Discussion Paper for Banks on Implications of Principles 16-21” (October, 2013),
(2013年11月11日 掲載)