第68回国連総会は12月18日に、デジタル時代におけるプライバシーの権利など人権に関わる決議を採択しました。一方、第24回人権理事会で採択された人権擁護者に関する決議について、その決議の実施を延期する決議を採択しました。
人権の伸長・保護のために活動する個人や団体である人権擁護者は、人権侵害に関する情報や被害者の声を発信するなどを通して、国連の人権制度において重要な役割を担っています。国連は1998年に、国内・国際レベルにおいて、人権の保護・実現を求めて活動する個人や団体の権利を認め、各国に人権擁護者を保護する措置をとることを求める、人権擁護者の活動に関する宣言を採択しています。しかし、多くの国で人権擁護者の活動が規制されたり、活動する団体や個人が迫害される事態が現在も起っています。
9月に開催された第24回人権理事会は、国連の人権制度や代表に協力した個人や団体に対して、殺害、拘束などの威嚇や報復が行われていることについて、人権理事会、特別報告者、条約機関や地域人権制度を含む国際機関へのアクセスの権利を再確認し、国際機関や制度に連絡したり、協力する個人や団体に対するあらゆる威嚇や報復行為を防止するよう求める決議を採択していました。その決議では、また国連事務総長に、威嚇や制裁からの保護を促進するためのフォーカル・ポイントを設置するよう要請していました。決議は賛成31に対し反対は1でしたが、棄権が15カ国あり、個人や団体が自由に国連機関に接触することに対して消極的な意見を述べる国がありました。
その決議に対して、総会の第三委員会でアフリカ諸国を中心としたグループから、人権理事会の決議に基づく検討や行動を延期し、総会の会期末までに決議に関する検討を行うという案が出されました。この決議案について、人権理事会の決議が総会に対して決議を求める勧告を含んでいないことから、人権理事会が一度決議したことを覆すものだと反対する国もありましたが、賛成76、反対74、棄権18で通過し、本会議でも賛成94、反対71、棄権23と採択され（A/RES/68/144）、人権理事会の決議を再考することが決まりました。
他方、総会は女性人権擁護者について、女性の人権の伸長・保護、女性に対する差別の撤廃だけでなく、あらゆる人権の伸長・保護に取り組む女性の人権擁護者が、生命や安全を脅かされ、制度的な人権侵害の危険にさらされているほか、歴史的、あるいは構造的な不平等や差別により、彼女たちが迫害され、その業績が貶められることがあることなどについて懸念を表明する決議を採択しました（A/RES/68/181）。決議は、各国に彼女たちの人権の伸長・保護における重要な役割を公に認め、彼女たちを恣意的な逮捕や拘束、拷問などから保護し、彼女たちに対する暴力や人権侵害を防止することなどを求めています。
総会は、情報通信技術の発展により、政府、企業や個人によって人権の侵害となり得る通信の傍受やデータ収集が可能になったことについて、国外を含む通信傍受や個人データ収集が行われていることをあげ、プライバシーの権利が民主的社会の基礎の一部であり、表現の自由や意見をもつ自由の実現のために重要であることを再確認する決議を採択しました（A/RES/68/167）。決議は、各国にデジタル通信における、プライバシーの権利の侵害をやめ、侵害を防止するよう国際人権法に沿った法整備を行い、国家による通信の傍受の透明性や説明責任を確保するための独立した監督機関をつくるよう呼びかけています。
特定の国に対する決議として、総会は、シリア、ミャンマー、北朝鮮とイランの人権状況に関する決議を採択しました（A/RES/68/182、242、183、184）。民主化のプロセスが進み、多くの政治犯が釈放されているミャンマーの人権状況に関する決議では、これらの進展を歓迎しつつ、ラカイン洲のロヒンギャの状況に対する重大な懸念が示され、政府に対して住民を暴力から保護し、人権の尊重を確保することなどを求める他、国際社会に対してもミャンマー政府が国際人権法上の義務を果たせるよう支援を続けるよう呼びかけています。（12月20日）
出所：
「General Assembly Adopts 68 Resolutions, 7 Decisions as It Takes Action on Reports of Its Third Committee」 12月18日付プレスリリース General Assembly GA/11475
http://www.un.org/News/Press/docs//2013/ga11475.doc.htm
第68回総会決議 http://www.un.org/en/ga/68/resolutions.shtml
（2013年12月24日 掲載）