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アイヌ民族に対する理解促進や差別撤廃の取り組みの必要性が浮き彫りに-内閣府調査
内閣府は2013年12月、アイヌ政策に関する初めての世論調査の結果を発表しました。
調査は2008年の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」の国会可決に合わせ、当時の町村官房長官がアイヌ政策を推進する談話を出して5年が経過したのを機に初めて実施したものです。13年10月24日~11月3日に、無作為抽出した全国の日本国籍の成人男女3,000人を個別面接方式で尋ね、有効回答は1,745人(58・2%)でした。
結果は、性別と年代別(20代から60代まで10歳単位と70歳以上)にわけて集計されています。
アイヌ民族を「知っている」は全体で95.3%で、全年代層で9割を超えました。しかし、「知っている」人のうち、先住民族であることを知っているのは68.3%、アイヌ民族が北海道や首都圏など全国各地で暮らしていることを知っているのは48%、北海道開拓の過程で困窮化したなどの歴史があることを知っているのは38.1%にとどまりました。アイヌ民族に対する基本的理解が進んでいない現状が明らかになりました。
差別や偏見の有無については、「どちらかというと」も含めて「平等だと思う」が50.4%、「平等ではないと思う」が33.5%、「わからない」が16.1%。平等ではないと思うは、70歳以上は22.1%でしたが、20代は50%で、若年層ほど不平等だと認識しています。
都市規模別に見ると,大きな差異は見られないものの、性別に見ると、「平等であると思う」とする人の割合は男性で、「平等ではないと思う」とする人の割合は女性で、それぞれ高い傾向になっています。 そのような結果から、差別をなくしていくための取り組みの必要性があらためて浮き彫りとなりました。
また、政府が2020年度の開設を目指し、白老町に整備する「民族共生の象徴となる空間」(象徴空間)については、「知らなかった」が85.5%。
さらに、「イランカラプテ」キャンペーンについては、「知っていた」とする人が3.0%に対して、「知らなかった」と答えた人が95.1%でした。このキャンペーンは、08年の国会決議の後に設置されたアイヌ政策推進会議が、生活実態調査を行い、調査をふまえた施策などのほか、国民の理解を促進するための活動を行うことなどとしており、2013年から3年間、重点的にアイヌ文化などの普及啓発を推進をめざして、国や自治体、大学やアイヌ協会などNGOと共同で始めています。
<出典>
アイヌ政策に関する世論調査-内閣府大臣官房政府広報室
世論調査報告書(平成25年10月調査)
<参考>
「民族共生の象徴となる空間」構想の憲法的意義
落合研一(北海道大学アイヌ・先住民研究センター)
『国際人権ひろば』 No.108(2013年03月発行号)より