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日本政府が障害者権利条約の批准に際して、子どもと父母の分離の禁止に関して入管法に基づく退去強制が優先するという「解釈宣言」

日本政府が2014年1月20日に「障害者権利条約」(障害者の権利に関する条約)の批准書を国連に寄託したことで、2月19日から日本について効力をもつことになりました。日本政府は同条約の批准にあたり、「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないこと」を定めた第23条4について、「出入国管理法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではない」とした「解釈宣言」を行っています。
それに関して外務省は、1994年に「子どもの権利条約」(児童の権利に関する条約)の締結にあたり、父母からの分離の禁止という同様の規定が置かれている同条約第9条1について解釈宣言を行っているため、障害者権利条約の締結に当たっても同様の解釈宣言を行うと説明しています。
2013年11月の衆議院外務委員会、12月の参議院外交防衛委員会における条約承認に関する審議における質問に対して、岸田文雄外務大臣や岸信夫外務副大臣が上記の趣旨の答弁を行っています。そのなかで、岸外務副大臣は、12月3日の参院外交防衛委員会において、児童が父母から分離されないことを確保する23条4の規定は、「締約国の出入国管理法上の適切な処分の妨げになるものではなくこのような考え方については起草段階から締約国間で広く共有をされており、理解を得ているものと考えている」と答弁しています。また、今回の解釈宣言は、「それ自体をもって児童の最善の利益への配慮を否定するというものではない」と述べています。
国際人権条約の批准という積極面のなかで、法務省・法務大臣の「裁量」が大きく影響する入管行政が、子どもの権利条約および障害者権利条約といった国際人権基準よりも「優先的に解釈」されているという課題が残っています。
 
<参考>
障害者権利条約
第23条 家庭及び家族の尊重
4 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。いかなる場合にも、児童は、自己が障害を有すること又は父母の一方若しくは双方が障害を有することを理由として父母から分離されない。
 
子どもの権利条約
第9
1      締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。
 
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/01/2-5.html
日本、障害者権利条約を批准、2月に発効(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ)
 
<出所>
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000018095.pdf
障害者の権利に関する条約の説明書(外務省)
 
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/0005185
20131113005.htm
衆議院 外務委員会
第5号 2013年(平成25年)11月13日
小川淳也議員(民主党)の質問
 
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/185/0059/18512030059010.pdf
185-参-外交防衛委員会-10号 平成25年12月3日
島尻安伊子議員(自民党)の質問

(2014年01月23日 掲載)