障害者権利条約の実施をモニターする障害者権利委員会の第11会期が3月31日から4月11日まで開催され、アゼルバイジャン、コスタリカ、スウェーデンとメキシコの条約実施に関する報告が審議されたほか、この委員会としては初めての一般的意見となる、法の前の平等に関する1号とアクセシビリティに関する2号が採択されました。
障害者権利委員会は他の人権条約の委員会と同様、各国の報告の審議や個人の通報の検討を踏まえ、条約の規定の解釈について、「一般的意見」を公表することができます。
障害者権利条約12条の法の前の平等に関する一般的意見1は、障害のある人が法の前に法的な人格を有している人であると認められることを保障し、他の人と平等に法的能力を有していることを認めていると述べています。法的な能力を有しているということは、権利の保有者であり、法の下で権利義務を有し、あるいはそれを行使する主体性を有しているということを含み、法的な関係をつくり、変え、終了させる能力を有しているということです。委員会は、法的な能力と精神的能力は別個の概念であり、区別されなければならず、精神的な能力を根拠に法的な能力が否定されることは12条の下で認められないことを指摘しています。また、この点について、多くの国では二つの概念が一緒にされ、判断力の不足を理由に特定の決定を行う法的能力が排除されることが報告されているとしています。
12条3項は、締約国の「障害のある人がその法的能力の行使に当たり必要とする支援にアクセスすることができるようにするための適切な措置をとる」義務を規定していますが、決して障害のある人の法的能力を否定し、代わって判断するということになってはならないことがあげられています。また、法的能力の支援が濫用にならないような安全措置が12条4項で求められています。この項の趣旨は、障害のある人の権利、意思や意見の尊重を確保することであり、その際、「最善の利益」原則は成人については12条で求められる安全措置ではないことが指摘されています。
一般的意見2は、9条のアクセシビリティの解釈を説明していますが、9条は、「障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするため、障害のある人が、他の者との平等を基礎として」物理的な環境やサービスにアクセスできるよう必要な措置をとることを締約国に義務づけています。この範囲には施設や交通手段だけでなく、情報、通信や他のサービスが含まれます。また、公共、民間を問わず、一般に開かれた、あるいは提供されているものすべてが含まれます。委員会は、アクセシビリティが障害のある人の自立した生活や社会への平等な参加の前提であると位置づけ、アクセスの否定は差別になるとしています。(4月15日)
出所:
障害者権利委員会 一般的意見 (OHCHR)http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CRPD/Pages/GC.aspx
参考:
「日本、障害者権利条約を批准、2月に発効」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2014年1月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/01/2-5.html
(2014年04月16日 掲載)