NPO法人メコン・ウォッチによると、ビルマ(ミャンマー)のヤンゴン近郊に建設中のティラワ経済特別区(SEZ)の住民 3名が来日し、2014年6月2日に東京の国際協力機構(JICA)に対して、開発に伴う農地喪失や生活手段の喪失などの被害を示すとともに、解決策を求める異議申立書を直接提出しました。2008 年 にJICA が再編されて以降、その「環境社会配慮ガイドライン」と「環境社会配慮ガイドラインに基づく異議申立手続」による初めての正式な異議申し立ての手続きが行われたことになります。
異議申立書では、同事業のフェーズ 1 において 400 ヘクタール区域の住民が移転に伴い被った損害、および残りの開発区域 2,000 ヘクタール内の住民1,055世帯が被る可能性のある損害について提示されています。農地の喪失や農地へのアクセスの喪失、生計手段の喪失、貧困化、住民の子どもたちの教育機会の喪失、移転地における清潔な水の供給や排水システムの不備といった基礎的なインフラに関する問題など生活の根幹に関わるものです。
異議申立書ではまた、JICAの事業実施における説明責任を果たしていないことも指摘されています。移転のプロセスでは、住民に対して土地の補償が適切な時期に行われなかったとも指摘しています。
申し立てを受けたJICAは、異議申し立て手続きが円滑に実施されていくように努めるとコメントしています。
JICA はティラワ経済特区開発事業に対し、ODA事業の一環であるJICA海外投融資として出資額の 10%にあたる約 5 億円(50 億チャット)を出資し、日本企業 3 社(三菱商事、住友商事、丸紅)が39%を出資しています。残りの 10%をミャンマー政府が、41%を 9 社のミャンマー企業の合弁が出資している事業です。ティラワ経済特区は、2015年の一部開業を目指して開発が行われており、2013年5月には安倍首相が視察を行うなど、日本が官民挙げて開発を進めている事業です。
<参考>
http://www.mekongwatch.org/
NPO法人メコン・ウォッチ
http://www.jica.go.jp/environment/guideline/
新JICAの環境社会配慮ガイドライン
http://www.jica.go.jp/activities/schemes/finance_co/loan/
海外投融資(JICA)
(2014年06月03日 掲載)