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アベノミクスのもとでの「外国人家事支援人材」の受け入れの目的は?
大阪の戦略特区、公式に受け入れ表明
安倍内閣は2014年6月24日、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」と、アベノミクスの成長戦略『「日本再興戦略」改訂2014』を閣議決定しました。今回の改訂版は、13年6月に打ち出した「成長戦略」で「積み残し」となっていた課題に対応するため、政府の産業競争力会議などの場で検討してきた施策をまとめたもの。改定版では、現行の「岩盤規制」にひとつひとつ穴を空けていくことが強調されています。
改訂版の基本的な考え方として、施策の進捗状況等を検証するとともに、残された10の重要な課題にフォーカスして改革の方向性を提示しています。そのひとつに、「外国人が日本で活躍できる社会へ」を打ち出し、外国人技能実習制度の見直しと、製造業、介護、家事支援という「重要分野の新たな就労制度創設」をあげています。
家事支援に関しては、国家戦略特区における人材の試験的な受け入れを計画しています。「家事支援サービス提供企業が雇用し、地方自治体が管理する」という枠組みのもとで、速やかに具体的な制度設計が検討されることになっています。
2014年6月末時点で家事支援人材の受け入れを公式に表明しているのは全国6地域の特区のうち関西圏特区内の大阪府のみですが、兵庫県も関心を示しています。6月23日に大阪で開催された第1回関西圏国家戦略特別区域会議において、大阪府の松井知事が外国人家事支援人材の受け入れを大阪で検討していることを報告し、ニーズの把握や治安等への影響、入国管理や労働基準に監督行政など国に権限があることと自治体との責任の分担についてなどの検討課題を提示しました。具体的な受け入れ態勢に関しては、第2回以降の会議で議論される予定です。
ジェンダー不公正を増幅させる「女性の活躍 推進 」の方針に抗議の声
家事支援人材の受け入れは、「外国人が日本で活躍」という課題にあげられているものの、背景には日本の「女性の活躍促進(母親が安心して働ける、女性が輝く社会へ)」という目的があります。すなわち、女性の家事等の負担を軽減するため、国家戦略特区において、外国人家事支援人材の受け入れを可能とするという政策なのです。
そのような政策に対して、女性や移住労働者の権利保障をめざす市民団体のあいだでは疑問の声があがっています。そうしたなか、NPO法人アジア女性資料センターと移住労働者と連帯する全国ネットワークは6月27日、国家戦略特区での「女性の活躍推進」を名目とする「外国人家事支援人材」受け入れが家事労働における男女の平等な参加を妨げるものであることに抗議するとともに、日本政府が国際労働機関(ILO)の「家事労働者のためのディーセント・ワークに関する条約」(第189号条約、2011年6月採択)を批准することを要求する緊急の共同声明を発表しました。声明は7月6日まで賛同を求め、7日に内閣府男女共同参画局など関係部署に提出される予定です。
<出典>
関西圏 国家戦略特別区域会議 (首相官邸)
国家戦略特区について 大阪府
拙速な「外国人家事支援人材」受け入れに抗議し、ILO家事労働者条 約の批准を求める共同声明(2014年6月27日)(アジア女性資料センター)
<参考>