7月7日から25日まで111会期を開催している自由権規約委員会は、15日と16日に日本の報告について審議し、24日に日本に対して懸念事項や勧告を含む総括所見を採択しました。
「市民的および政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)は、表現、良心、信仰の自由、政治的権利、生命の権利、拷問の禁止、平等の権利などの権利について規定する条約です。規約の締約国は、規約の権利を実施した措置や実施状況について定期的に報告を提出する義務を負います。自由権規約委員会は規約に基づいて設置された18人の専門家による機関で、締約国が提出した報告を政府代表団と審議し、課題や勧告を含む総括所見を公表します。日本は2008年に審議された第4回・第5回報告に続いて、第6回目の報告の審議となりました。
総括所見では、歓迎すべき点として第三次男女共同参画基本計画の策定や、公営住宅法における同居親族要件の改正により、同性カップルでも入居が可能になったこと、民法の婚外子の相続に関する差別規定の廃止、障害者権利条約の批准などがあげられています。
一方、委員会は、2008年に出された前の勧告の多くが実施されていないことに懸念を表明し、それらの実施と並んで、裁判所での規約の権利の保障、個人通報制度に関する選択議定書の批准や国内人権機関の設置などの勧告を再度行っています。
ヘイトスピーチについては、報告審議にあたりNGOが、ここ数年各地で行われているデモや朝鮮人学校に対する街宣活動などについて情報を提供していましたが、委員会は総括所見で、数多くのデモが許可されていることや「ジャパニーズ・オンリー」の表示が掲げられていることなど指摘し、人種差別、憎悪や人種的優位を唱える宣伝活動やデモを禁止するよう勧告しました。また、人種主義的な動機について、警察や検察などへの研修も強化するよう求めました。
特定秘密保護法は2013年に制定され、日本の定期報告には含まれていませんでしたが、審議の際、委員から、対象となる秘密の定義や罰則に関する意見や質問が出されていました。総括所見においても、特定される秘密の定義が曖昧で広いことなど懸念が示され、同法の適用が自由権規約の19条に適合するよう勧告しています。
そのほか、女性の政治参加の拡大や、賃金格差の是正、セクシュアル・ハラスメントを犯罪とすることなどのほか、DVについて被害者の保護や加害者の処罰を行うこと、性暴力について法整備を行うことなども勧告しています。また、公営住宅法の同居親族要件改正後、自治体の公営住宅に関してLGBTの人の入居が排除されないよう入居要件を見直すよう、LGBTに対する偏見に対して啓発に取り組むよう呼びかけています。
また、死刑、代用監獄や警察・検察による取調べ、精神障害のある人の非自発的入院、「従軍慰安婦」の問題、技能実習制度、強制退去、先住民族などに関する勧告も出されました。死刑、「従軍慰安婦」、技能実習制度、代用監獄や取調べに関する勧告については取った措置について1年以内に委員会に報告するフォローアップ手続の対象となっています。(7月25日)
出所:
第6回日本定時報告に関する総括所見
(自由権規約委員会第111会期 OHCHR) http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=626&Lang=en
(仮訳 NGOのネットワークによる訳) CCPR 最終訳 自由権ネット.pdf
参考:
「ジュネーブで国連規約人権委員会、日本報告審査が始まる-委員からヘイトスピーチに関する質問など(7月15日)」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2014年7月) https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/07/715.html
「自由権規約委員会、特定秘密保護法や「慰安婦」などについて質問(7月16日)」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2014年7月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/07/716.html
(2014年07月25日 掲載)