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大阪市におけるヘイトスピーチ対策の動向
大阪市が検討を開始
大阪市の橋下徹市長は7月10日の定例記者会見で、在日コリアンなどを標的とするヘイトスピーチに対して「問題だ」と指摘し、対策を講じる考えを明らかにしました。橋下市長は、「表現の自由もあり、スピーチ自体の制限や罰則は難しい」としたうえで、「発言内容を証拠保全し、表現について第三者委員会で議論し、結果を公表する」「被害者がそれを活用して裁判に訴えるとか、道路使用許可の一つの判断材料にするとかならできるのでは」といった考えを述べました。同時に、ヘイトスピーチを行う団体側と面会する意向も示しました。
それに先立つ7月8日、大阪高裁が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が2009年12月から2010年3月にかけて京都朝鮮学校周辺で行った街宣活動を「人種差別」と認定し、京都地裁判決を支持した賠償命令の判決を出しましたが、それをきっかけに抑止策の検討を決めたといいます。
橋下市長は、ヘイトスピーチが大阪をはじめ全国各地で行われるなど、新たな人権問題として顕在化しているとの認識のもと、9月3日に大阪市人権施策推進審議会(会長:坂元茂樹・同志社大学法学部教授)に対し、市民の人権を擁護する観点から、「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」に対する大阪市としてとるべき方策について諮問しました。
国連人種差別撤廃委員会は8月29日、日本政府への総括所見のなかでヘイトスピーチへの法規制を勧告しました。それに対して、橋下市長は「公権力が差別的表現かどうかと判断するのは極めて危険だ」と指摘したうえで、「日本は治安維持法という戦前の不幸な過去を背負っており、表現の自由を徹底的に保障している。公権力で抑えていくのではなく、民事的な司法での解決を第一に考えるべきだ」とも語っています。
NGOの取り組み
そうしたなか、大阪市に対する在日コリアンのグループの取り組みが活発化しています。
NPO法人コリアNGOセンターは7月31日、ヘイトスピーチ対策に関する要望書を大阪市に提出しました。要望書の概要は、①ヘイトスピーチが明らかに予想される集会などの行為が大阪市内で行われる場合、大阪市が管理する公共の施設および公園の使用を認めない、②ヘイトスピーチ等の表現行為によって被害を受けた在日コリアンおよび他のマイノリティのための常設の相談窓口の開設、③日本政府に対して在日コリアンをはじめとするマイノリティの人権擁護の観点からヘイトスピーチに対する早急な対策を講じるよう申し入れる、④ヘイトスピーチ対策のための第三者機関が設置される場合、その機関の委員のなかに当事者として在日コリアンが参加し、意見が反映されるよう考慮する、というものです。
さらに、コリアNGOセンターは9月24日、フリーライターで自らも裁判で在特会を訴えている李信恵(リ・シネ)さんと共に、在特会との面談を表明した橋下市長に対し、「会うべきは被害を受ける当事者」であり、行政の長との面談で人種主義集団を承認するかのような印象を与えるのは避けるべきだとの申し入れを行いました。
李さんは、民族差別的な発言で名誉を傷つけられたとして、在特会の桜井誠会長やネット上の差別的な発言を掲載したまとめサイト「保守速報」の運営者を相手取り損害賠償を求めて8月18日に大阪地裁に提訴しています。
橋下市長は9月25日の記者会見で、ヘイトスピーチについて「(在特会が)特別永住者制度がおかしいと言うなら日本政府に言うべきだ。公権力を持たない人たちを攻撃するのは、ひきょうで格好悪い」と批判したうえで、10月中にも在特会と面談する意向を語りました。しかし、ヘイトスピーチの被害者が面会を要望していることについて、「市の担当者がきちっと話を聞く。団体は、職員では対応できないので僕が出て行く」と述べ、李さんたちとの面談の意向がないことを示しました。
一方、NPO法人多民族共生人権教育センターの理事長、事務局長、事務局次長、および16名の弁護士が呼びかけ人となり、「大阪市ヘイトスピーチ規制条例」(仮称)を求める生野区1万人署名のキャンペーンを開始しました。
在日コリアンと日本人が共生の歩みを続けてきた生野区で、ヘイトスピーチ規制条例を求める声を集約して、大阪市に届けることを目的とした取り組みだとしています。
橋下徹大阪市長から大阪市人権施策推進審議会へ「憎悪表現(ヘイトスピーチ)」に対する大阪市としてとるべき方策について諮問しました
・橋下大阪市長にあててヘイトスピーチ規制に関する要望書を当センター(コリアNGOセンター)が提出
・大阪市におけるヘイトスピーチ対策に関する要望書
平成26年度 市長会見 9月25日
いっしょにつくろう!大阪市ヘイトスピーチ規制条例