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「援助は何のため」「援助は誰のため」‐政府の「新開発協力大綱(案)」が投げかけるもの
外務省は10月23日、政府が発展途上国への開発協力を実施するための理念や政策、課題、実施原則などを定めた「開発協力大綱」(案)を発表しました。政府は1992年に閣議決定により「政府開発援助(ODA)大綱」を初めて策定し、2003年に改定していました。今回の改定は11年ぶりとなるもので、名称が「政府開発援助大綱」から「開発協力大綱」へと変更されます。
外務省は、名称変更の背景として、「協力」の対象国を経済協力開発機構(OECD)傘下のDAC(開発援助委員会)が基準とする経済指標以上の水準に達し「卒業」した国へとスコープを拡大すること、また政府だけでなく民間企業、NGOなどの様々な資金・活動との連携強化の方針から「オールジャパンの協力の原動力としての役割」にすることなどをあげています。「援助」から「協力」へとシフトするものです。
新大綱案は、従来の発展途上国への援助に加え、安倍首相が掲げる「積極的平和主義」を踏まえるとともに、現大綱で明示している軍事的用途・国際紛争助長への使用の回避を堅持しつつも、民生目的や災害援助など非軍事目的の場合に限定する形で容認しています。また、新興国、島しょ国などへの支援拡大を表明しています。
政府は改定案について11月27日まで意見募集(パブリック・コメント)をするとともに、東京、京都、仙台、福岡で公聴会を開催したのちに、年内に閣議決定する方針です。
外務省はその一環として、11月16日に京都で公聴会を開催しました。参加者は20数名にとどまったものの、あらかじめ応募していた8人が意見表明をしたほか、4名が意見や質問を行いました。「新大綱でもODAを軍事目的に使用することはない」と説明する外務省に対して、機密性が高い軍が実際に支援物資などをどう使用しているのかを把握するのは困難ではないかとする懸念する意見が相次ぎました。さらに、ODAの目的として国益や外交手段が随所に強調されていること、また経済成長路線が前面に押し出され、日本の知見を活かすこと、これまでの援助の成果について自画自賛が強すぎることなどに違和を唱える声が多くありました。
参加した人の意見や疑問は、「援助は何のため」「援助は誰のため」ということに集約できます。
ヒューライツ大阪の藤本伸樹も参加して、実施体制の「官民連携、自治体連携」に関して、人権の視点から国際人権条約や国際基準となっているCSR(企業の社会的責任)を尊重することを新大綱に盛り込むよう意見を述べました。
政府開発援助(ODA)大綱の見直しについて(外務省、2014年10月)