国連人権理事会第30会期中の2015年9月21日(9月14日から10月2日までジュネーブのパレ・デ・ナシオンにて開催)、翁長知事は沖縄に米軍基地が集中していることは人権侵害であると訴えました。知事はアイテム4《理事会が注意を向けるべき人権状況》のもと、市民外交センターのNGO枠組みで2分間の口頭声明を行いました。「日本にある米軍基地・施設の73.8%が沖縄に集中していますが、沖縄はそれらを望んで受け入れたことはありません。沖縄県民の自己決定権と人権をないがしろにして米軍基地が存在しています。今、日本政府が強行に進めようとしている辺野古の基地建設はなんとしても反対していきます(要点のみ抄訳)」と述べ、人権理事会に集まる世界の政府代表の注意を喚起しました。
それに対して、日本政府代表は基地問題を人権理事会でとりあげるのはなじまないと一蹴しました。
沖縄の歴史、固有の文化、米軍基地の存在などに関係する人権問題については、2010年および2014年の人種差別撤廃委員会日本審査においても取り上げられ、締約国日本に対して以下の勧告が行われましたが、いずれも実施はされていません。
◆2010年審査勧告:委員会は、沖縄の住民の権利を促進し適切な保護施策や保護政策を設けるために、沖縄の住民が被る差別をモニターすることを目的に、沖縄の代表者と広い協議を持つことを締約国に奨励する。
◆2014年審査勧告:委員会は、締約国がその立場を見直し、琉球を先住民族として承認することを検討し、また彼/彼女らの権利を保護するための具体的な措置をとることを勧告する。委員会はまた,締約国が琉球の権利の促進及び保護に関連する問題について、琉球の代表との協議を強化することを勧告する
また、同日、この声明が行われる前に、人権理事会が開かれているパレ・デ・ナシオンの別の会場で、反差別国際運動、市民外交センターなどの主催によるサイドイベント「沖縄における軍事化と人権侵害」が開催されました。市民外交センターの永井文也さんの報告によれば、サイドイベントでは、翁長知事の特別報告に続き、上村英明・市民外交センター代表による「自己決定権」に関する報告、吉川秀樹・沖縄・生物多様性市民ネット共同代表による「辺野古の環境問題」に関する報告、そして潮平芳和琉球新報編集局長による「言論・報道の自由と環境権」に関する報告が行われ、最後に2015年7月に沖縄を訪問した国連先住民族の権利に関する特別報告者のビクトリア・タウリ・コープスさん(フィリピン出身)が次のようにコメントをしました。「自国のフィリピンでの経験をはじめ、これまで特別報告者として見聞きしてきた世界の先住民族の状況を鑑みれば、沖縄の問題は人権理事会を含む国際的な枠組みにおいて議論され、正義がまっとうされなくてはならない」と述べました。
サイドイベントの様子(写真提供:市民外交センター永井文也さん) |
(2015年09月29日 掲載)