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入国管理局、11月25日にバングラデシュに22人をチャーター機で強制送還 -人権上の問題が浮上
日本人の配偶者や婚約者などのいる男性たちも送還
法務省入国管理局は、2015年11月25日、超過滞在など非正規滞在状態にあるバングラデシュ人22人を羽田空港からチャーター機で強制送還しました。チャーター機による一斉送還は、2013年7月6日(フィリピン人75人)、同年12月8日(タイ人46人)、2014年12月18日(スリランカ人26人、ベトナム人6人)に続き今回で4回目です。
岩城光英法務大臣は11月27日の記者会見で、「送還に当たっては法令に従い、被送還者の人権に最大限の配慮をしつつ、慎重かつ厳正に対処しており、事故等が発生することなく送還を完了したと報告を受けている」と述べました。
法相は、「チャーター機送還は、送還忌避者が送還を阻止する目的で機内で迷惑行為に及んだりしても、搭乗を拒否されることなく、安全かつ確実な送還ができる有効な方法だと認識している」とチャーター機による送還の理由を述べています。
報道によると、送還を忌避していた23歳から53歳までの成人男性22人が送還されており、その中には日本での長期滞在者(最長は27年)や、難民申請したものの認定されなかった庇護希望者、また難民の異議申し立て却下処分の告知を受けてから6カ月以内で取消訴訟を起こすことができる人たちが含まれていました。
また、難民・移住労働者問題キリスト教連絡会など移住者や庇護希望者の支援や政策提言しているNGOによると、日本人の配偶者や婚約者がいる人たちも、送還直前に仮放免の更新が認められずに突然収容され、弁護士や家族と連絡がとれないまま引き裂かれたことが判明しています。送還中の機内では、食事のとき以外はずっと手錠をかけられていた、と日本に連絡してきた被送還者もいます。
これらの情報から、今回の送還において、法務大臣が説明する「被送還者の人権に最大限の配慮」した対応がとられていなかったことが浮かび上がってきます。にもかかわらず、「送還忌避者の安全かつ確実な送還を実現することが可能な、チャーター機を利用した集団送還の実施を今後も検討していく」と法相は語っています。実際、2016年度の法務省所管の歳出概算要求書のなかに、「送還忌避者の専属輸送による送還経費」として 93,017,000円が計上されています。
移住連などが共同で抗議声明を発表
チャーター機送還に対して、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)をはじめとする4団体は共同で12月4日、過去3回のチャーター機送還に際しても人権人道上の問題を指摘してきたにもかかわらず、これまでと同様に今回も送還プロセスにおける数々の人権侵害を伴う送還が強行されたとする抗議声明を発表しました。
声明では、「日本に暮らすすべての人びとの人権が等しく尊重される社会を求める立場から、彼・彼女らの家族との結合や日本での定着性、難民性などが考慮され、合法化が検討されることを強く望む」と訴えています。そして、「様々な理由で日本での滞在の継続を望む非正規滞在者に対して、合法化によって日本社会の一員として参加する機会を与えることは、多大な税金をかけて送還するよりも日本全体にとっても望ましいはず」としたうえで、日本政府に対し、非正規滞在の外国人に対する施策を根本的に見直すことを求めています。
<出典> 法務大臣閣議後記者会見の概要
平成27年11月27日(金)
チャーター機による集団送還に関する質疑について
平成25年7月9日(火)
チャーター機による送還忌避者の送還等に関する質疑について
平成25年12月10日(火)
チャーター機による送還忌避者の送還等に関する質疑について
平成26年12月24日(水)
チャーター機による集団送還に関する質疑について
<参考> ヒューライツ大阪「ニュース・イン・ブリーフ」
入管がフィリピン人75人をチャーター機で強制送還(2013年7月6日)
チャーター機で送還されたフィリピン人に関する実態調査団派遣と共同声明
フィリピン人75人の成田空港からの集団送還(7月6日)に関する実態調査-人権・人道上の問題が浮き彫り
チャーター機によるフィリピンへの75人の集団送還を検証する
13年12月に成田空港からタイに超過滞在者をチャーター機で集団送還、7月のフィリピンに次ぎ2度目
2014年12月のスリランカへのチャーター機送還は国際基準に違反-山村淳平医師の調査報告