ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします
大阪市ヘイトスピーチ対処条例、制定される(1月15日)
全国に先駆けた条例
2015年5月に大阪市議会に提出されていた「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」(案)が、2016年1月15日の大阪市議会本会議において一部修正のうえで可決されました。ヘイトスピーチを抑止することを目的とした全国初の条例となります。
条例案をめぐり、市議会の全会派が制定趣旨には賛同していたものの、「憲法が保障する表現の自由を侵害しかねない」といった慎重論が相次いだことから採決が見送られ、継続審議となっていました。
当初の条例案は、特定の人種や民族を排除したり、暴力や差別を扇動したりする「表現活動」をヘイトスピーチと定義し、被害を受けた大阪市在住・在勤などの市民や団体の申し出を受け、学識経験者5人以内で構成する市長の付属機関の審査会が内容を調査するとしていました。ヘイトスピーチだと認定されれば、市はヘイトスピーチを行った団体や個人の名前をホームページで公表し、市民が提訴を望む場合は訴訟費用を貸し付けるという内容でした。
しかし、自民党などから、審査会の人選は市長のみによる委嘱では中立性が担保できないといった意見や、被害者の訴訟費用の貸付規定について、訴訟の一方の当事者だけを税金で支援することへの懸念が指摘されました。そのため、市は委員の選任には議会の同意が必要だと修正し、貸付規定を削除するとともに、国が法整備をした際には条例を見直すことを付則として盛り込んだ修正案を1月15日の本会議で提出しました。最終的に採決となり、大阪維新の会、公明党、共産党などの賛成多数で可決されました。
制定された条例には、市民運動が求めてきた「ヘイトスピーチを明確に禁止する条項」および「ヘイトスピーチを扇動する団体・人物などへの公共施設の貸出し制限」は盛り込まれなかったものの、大阪市としてヘイトスピーチを許さないという立場を示した意義は大きな一歩だといえます。
審議がカラーボールで妨害され一時中断
ヘイトスピーチ条例が本会議で審議中の1月15日午後7時半頃、傍聴席にいた男が「日本人の人権を守れ」などと叫びながら議場にオレンジ色のカラーボールを2個投げつけ、割れて前列の市長や賛成討論中の議員に飛び散ったため本会議が一時中断しました。男は威力業務妨害の疑いで逮捕されました。「在日特権を許さない市民の会」の集会などに以前から参加していた人物だとされます。
本会議が再開されたのは2時間半後の午後10時過ぎで、本会議場から特別委員会室に場所を移して傍聴人を入れずに行われました。他の2議案とともに可決され閉会したのは午後11時前でした。
<参考>
大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例案(2015年5月22日提出)
一部修正の承諾を求めることについて(2016年1月15日)
「大阪市ヘイトスピーチ対処条例」制定を求めて集会&パレードと市会に要請行動(15年10月6日)