2016年5月12日、参議院法務委員会で「ヘイトスピーチ」の解消をめざす法案が全会一致で採決されました。参議院本会議で可決されたあと、今後は衆議院に送られ、今国会で法律が成立する見通しです。法律は、在日外国人に対する差別的言動は被害者に多大な苦痛をもたらし、地域社会に深刻な亀裂を生じさせている許されない行為であり、その解消は喫緊の課題であると定義づけ、国や自治体に相談体制を整備し、人権教育を充実するよう求めています(ヘイトスピーチ解消のための法律.pdf)。
与党が出したこの法案に対して、多数の市民団体から禁止規定がなく実効性に乏しいことや、適法に居住する本邦外出身者に対象を限定している点などについて修正を求める声が出ていました。
5月12日の参院法務委員会には、ヘイトスピーチに対して一刻も早い法規制を求めてきた在日コリアンやNGOの関係者がかけつけ、傍聴席を埋めました。この間、人種差別撤廃法の制定を求めてきたNGOは同日、法務委員会終了後に記者会見を開き、声明を出しました。概要は以下の通りです。また、全文は、外国人人権法連絡会のブログhttps://gjinkenh.wordpress.com/ に掲載されています。
◆禁止条項が入らないため実効性は乏しいが、ヘイトスピーチは許されないということを法律で宣言したことは意義がある。
◆対象を「適法に居住するもの」に限定したことは大きな誤りであり、非正規滞在者には差別的言動を行っても許されると解釈される可能性がある。
◆日本は人種差別撤廃条約の批准国として、差別を禁止して終了させる義務を負っている。付帯決議にある「人種差別撤廃条約の精神に鑑み適切に対処する」ことを政府は十分尊重して法律を実施していかなくてはならない。
◆これまで「法律がない」という言い訳で、ヘイトスピーチに対して国も地方自治体も対処をしてこなかった。法律が成立すれば私たちはこの法律を活用して、今後も反差別の取り組みを深化させていく。
法務省は2016年度に入り、在日外国人の実態把握のために各地の自治体を通して調査を開始しています。日本はこれまで国連人権条約機関の審査において、マイノリティの実態調査を行うよう繰り返し求められてきました。今後さらに求められるのは、日本における人種差別の実態に十分こたえることができる有効な人種差別撤廃法の制定です。
参照:「ヘイトスピーチに関する与党法案に対する緊急声明」外国人人権法連絡会が発表
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2016/04/post-130.html
(2016年05月13日 掲載)