2015年のドイツのG7エルマウ・サミットで議論され、首脳宣言にも一つのテーマとして盛り込まれた「責任あるサプライ・チェーン」について、国内外60のNGOが共同で2016年4月、G7首脳に対してG7伊勢志摩サミットでも取り上げることを求める提言を提出していました。しかし、5月26日・27日に開催されたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言では、「責任あるサプライ・チェーン」に関する内容は、極めて不十分に、数行のみしか盛り込まれませんでした。このことに対し、ヒューライツ大阪を含む7つのNGOが共同して、「G7首脳宣言に対する市民社会の見解」を6月10日付で出し、政府へも送付しました。
「見解」では、世界のサプライ・チェーンで「人権侵害、環境破壊、劣悪な労働環境が依然として続いている」現状の中で、「G7伊勢志摩サミットで主要なアジェンダとして扱われなかったことに関して、深い失望を表明」し、当初の「提言」にも記された具体的措置を改めてG7各国に求めています。さらに、次回のイタリアでのG7サミットでは「責任あるサプライ・チェーン」を議題として取り上げるとともに、サミットそれ自体が、市民社会とのエンゲージメントをより重視することも強く求めています。
【参考:G7伊勢志摩サミット首脳宣言での言及】
「我々は、国際的に認められた、労働、社会及び環境上の基準が、世界的なサプライ・チェーンにおいてより良く適用されるよう引き続き努力する。」(「貿易」の項目、日本語で66字)
【参考:G7エルマウ・サミット首脳宣言での言及(主要部分)】
我々は、国連ビジネスと人権に関する指導原則を強く支持し、実質的な国別行動計画を策定する努力を歓迎する。我々は、国連の指導原則に沿って、民間部門が人権に関するデュー・ディリジェンスを履行することを要請する。我々は、透明性の向上、リスクの特定と予防の促進及び苦情処理メカニズムの強化によってより良い労働条件を促進するために行動する。我々は、持続可能なサプライ・チェーンを促進し、ベスト・プラクティスを奨励する、政府及び企業の共同責任を認識する。」(「世界経済-責任あるサプライ・チェーン」の項目、日本語〔外務省仮訳〕で全1589字)
G7サミットでの「責任あるサプライ・チェーン」をめぐる問題は、人権、労働、そして地球環境をめぐり深刻な実態が覆うこの世界の現実の中で、国際社会に大きな影響力を持つG7国がいかに課題に対処するか、という重要な意味を持っています。また、G7エルマウ・サミットでG7各国が「国連ビジネスと人権に関する指導原則」にコミットし、その実施に向けて「ビジネスと人権に関する国別行動計画」にも言及したことは、「ビジネスと人権」あるいは広く「企業と人権」の視点からも重要です。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」のベースは国際人権基準であり、その普及を旨とするヒューライツ大阪も、この間「責任あるサプライ・チェーン」をめぐる問題を取り上げ、今回の「見解」にもコミットしています。
〈G7首脳宣言に対する市民社会の見解〉
〈参考〉
〈当サイト「ニュース・イン・ブリーフ」の関連ページ〉
(2016年06月12日 掲載)