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国連総会、「性的指向とジェンダー自認」など50の決議を採択(12月19日)
2016年12月19日、国連総会(全体会議)は社会、人道、文化に関する課題を議論する総会第三委員会から勧告された50の決議及び8の決定を採択しました。社会的、文化的問題については意見が分かれました。一方、不利な立場にある人々への人道支援の必要性については広く合意され、移民をはじめ脆弱な立場にある人々の窮状やデジタル・プライバシーの権利など35決議については無当投票で採択されました。
性的指向とジェンダー自認
なかでも論議を呼んだのは、「性的指向とジェンダー自認」に関する決議でした。まず、人権理事会が2016年6月の32会期で、『性的指向とジェンダー自認に基づく暴力と差別からの保護に関する特別報告者』を新たにつくり(決議32/2)、9月の33会期でビティット・ムンタボーンさんを任命しました。しかし、アフリカ諸国をはじめそれに反対する国々が、「性的指向とジェンダー自認」は国際法上保護されていないとしてその報告の審議・採択を延期するという文言を含む決議案を出していました。第三委員会では、延期するという部分を削除する案が通り、人権理事会の報告が僅差の多数決で採択されました。そして、総会の全体会議おいても賛成106、反対2、棄権74で、人権理事会の報告が採択されました。
女性及び少女の人身取引
「女性と少女の人身取引」に関する問題も議論が交わされました。決議案の国際刑事裁判所(ICC)に関する言及を削除するというスーダンが提出した修正案を否決したうえでコンセンサスにより採択されました。国連が、特に女性及び少女の人身取引問題を経済・社会開発、人権や法規則、その他の問題に関する幅広い政策や計画の中で主流に組み入れるよう促しました。
死刑執行のモラトリアム
また、死刑執行の猶予(モラトリアム)に関する決議も意見が分かれたものの、賛成117、反対40、棄権31で採択されました。決議において国連総会は、国家が死刑に直面する人々の権利保護を保障するセーフガードの国際基準を尊重し、領事関係の義務を順守し、漸進的に死刑の実施を制限し、死刑執行の猶予を確立することなどを要請しました。
デジタル・プライバシー
デジタル・プライバシーに関する決議については、総会は、国家がデジタル・コミュニケーションの文脈におけるプライバシーの権利を尊重すること、その権利侵害を終結させるための措置をとり、予防するための環境をつくることを要請しました。加えて、企業が「ビジネスと人権に関する指導原則」が定めるように、人権を尊重し、プライバシーの権利に影響を与えるようなデータの収集、使用、共有、保有に関して、情報の通知するとともに、透明性のある方針を確立するよう求めました。
その他の課題
その他の議題としては、女性及び少女に対するあらゆる形態の暴力を予防し撤廃するための努力の強化や、DVの予防と撤廃に関する決議などが採択されました。難民問題については国連難民高等弁務官事務所やアフリカにおける難民、帰還者、強制退去させられた人々の支援に関する決議が採択されました。
子どもの問題に関しては、子どもの権利、子どもの早婚・強制結婚、子どものいじめからの保護に関する3つの決議が採択されました。子どもの権利に関する決議においてはスーダンが女性及び少女の人身取引に関する決議同様、国際刑事裁判所に関する言及の変更を求める修正案を提示しましたが否決されています。
人種差別問題については、「現代のレイシズム、人種差別、外国人嫌悪や関連する不寛容などを焚きつけるようなナチズム、ネオナチズム、その他の類似行為への称賛との闘い」というタイトルの決議が採択されました。また、自決権、人権と極端な貧困、平和への権利に関する宣言、食料の権利、発展の権利、北朝鮮、シリア、イラン、クリミアの状況に関する決議などが採択されました。
(構成:谷口勇士・ヒューライツ大阪インターン)
出典(英語):