国連人権理事会の第34会期(2017年2月27日~3月24日)がジュネーブで開催され、41の決議とひとつの議長声明が採択されました。
◆思想、良心、宗教、信念の自由
人権理事会は、思想、良心、宗教、信念の自由を促進・保護するために、さらに努力するよう国家に求める決議を採択しました。とくに憲法・法制度が全ての思想、良心、宗教、信念の自由を区別なく十分かつ実効的に保障するよう促しています。
また、それとは別に、宗教および信念を理由とする不寛容、消極的な固定観念、差別、暴力およびその扇動との闘いに関する決議が採択されました。人権理事会は、公務員が公務中に宗教や信念に基づいた差別をしないよう確保するための効果的な措置をとること、および全ての宗教コミュニティにある人々が彼らの宗教を示すことができるよう促すことで宗教的自由と宗教の共存を促進するよう国家に求めました。
◆占領下のパレスチナ・他のアラブ地域
「パレスチナの人びとの自決権」決議は賛成43、反対2、棄権2で採択され、自由、正義、威厳の中で生きる権利およびパレスチナという独立国家である権利を含むパレスチナの人びとの自決権が、不可譲、不変で無条件であることが再確認されました。また、人権理事会はイスラエルによる国際法の重大な違反に関して承認や支援をしないという義務を守るようすべての加盟国に求めました。また、「占領下のシリア・ゴラン高原における人権」決議は賛成26、反対3、棄権18で採択され、人権理事会はイスラエルに、国連総会・安全保障理事会・人権理事会の関連決議、特に安保理決議497(1981年)に従うこと、および入植地の建設をやめることを求めました。他にも「東エルサレムを含むパレスチナ被占領地における人権状況」に関する決議など3つの決議が採択されています。
◆人種差別撤廃条約
2016年12月19日の決議71/181において国連総会は、現代のレイシズムと戦うために対応しきれていない部分を埋めるための、人種差別撤廃条約の補足的な基準の検討が進んでいないことに懸念を示し、「人種差別撤廃条約の補足的な基準の検討に関する人権理事会アドホック委員会」報告委員長に人種差別主義者および外国人嫌悪的な性質の行為を犯罪化する追加議定書草案の交渉を確実に開始するよう求めていました。
人権理事会は賛成31、反対4、棄権12で決議を採択し、総会の要請に従い、アドホック委員会第10会期において、追加議定書草案の交渉を開始することを決定しました。
◆ミャンマー
人権理事会は、ミャンマー、特にラカイン州における最近の軍隊・治安部隊による人権侵害の事実や結果を調査するために、調査団を至急派遣することを決定しました。また、ミャンマーにおける人権状況に関する特別報告者の任期を1年間延長しました。
◆デジタル時代のプライバシー
人権理事会は、インターネット上においてもプライバシーの権利を全ての国家が尊重・保護すること、および権利侵害を止めるための措置をとり、国際人権法に則した国内法を制定するなど、権利侵害を防ぐための状態をつくるよう求めました。
◆その他
人権理事会は、賛成32、反対15で人権と一方的強制措置に関する決議を採択しました。理事会は国際法、国際人道法、国連憲章、国家間の平和的関係に関する規範・原則に反する一方的強制措置を採択、維持、実行することをやめるよう全ての国家に求めました。
(※「一方的強制措置」は国家による、他国に政策変更を強いる経済措置を意味します。)
他に人権理事会は、「スリランカにおける調停、説明責任、人権の促進」、「文化的権利の促進と文化的多様性の尊重」、「出生登録と全ての場所において法律の前に人として認められる権利」、「持続可能な開発のための2030アジェンダ実施における子どもの権利保護」などの決議を採択しました。
また、「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容」に関する特別報告者の任務が新たにされ、3年間任期が延長されました。さらに、イランの人権状況に関する特別報告者、北朝鮮の人権状況に関する特別報告者、南スーダンの人権に関する委員会、シリアに関する調査委員会などの任期がそれぞれ1年間延長されました。
加えて、人権理事会は、第2回「人権、民主主義、法の支配に関するフォーラム」のテーマを決定し、また、国連総会にアフリカ系の人びとに関するフォーラムを設立するよう勧告しました。
次回の第35回人権理事会は2017年6月6日~23日に開催される予定です。
(抄訳・構成:谷口勇士・ヒューライツ大阪インターン)
出典(英語):
国連人権理事会ニュース
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=21448&LangID=E
(2017年03月31日 掲載)