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大気汚染:国連人権専門家、「見えない脅威」と闘うためのより厳しい規制を促す
「環境にやさしい管理および有害物質と廃棄物の処理をめぐる人権への影響」に関する特別報告者のバスクト・トゥンカク(Baskut Tuncak)氏、および「人権と多国籍企業およびその他の企業の課題に関するワーキンググループ」(ビジネスと人権に関する作業部会)のマイケル・アッド(Michael Addo)氏などの国連人権専門家たちは、2017年2月24日、世界中の人びとが汚染のない環境で生命や健康に対する権利を享有するために、企業がアカウンタビリティ(説明責任)を果たすよう法律の制定や実施を含む、強力な行動を国家が至急とるよう要請しました。
「大気汚染は世界中で大きな人権問題になっており、有害な汚染物質が発作、心臓病、がんやぜんそくなどの呼吸器疾患のリスクを高める」と専門家たちは述べています。世界保健機関(WHO)は、毎年約700万の早期死亡は大気汚染に関連があるとみています。さらに、世界的にも大気汚染が早期死亡の主要な環境要因となっているという研究結果がいくつも出てきています。
「子ども、出産年齢の女性、高齢者、体の弱い人びとや貧しい地区に住む人びとなどが最も脆弱な状況におかれている」と専門家たちは警告しています。ユニセフによれば、世界の子どもの約7分の1にあたる3億人の子どもたちが、最も有害なレベルに汚染された大気のもとで生活しています。小児科医たちは大気汚染がもたらす子どもの健康への影響に言及し「静かなパンデミック(世界的流行病)」と表現している、と専門家は強調しています。
「このような脅威はもはや無視できない」「国家は人びとが大気汚染にさらされることを予防・規制し、人権への悪影響から保護する義務がある」と専門家たちは述べています。また、「多くの証拠が存在するにもかかわらず、不処罰がはびこっており、複数の国の環境大臣は大気汚染の影響を否定すらしている。今、国際人権基準の下での緊急行動が必要だ」と述べ、アカウンタビリティが欠如している現状は受け入れられないものだと指摘しました。
加えて専門家たちは、「エネルギー、製造、運輸部門における予防・規制措置の実施を促すためには国境を越えた協力が必要である」と強調しました。
「強力な法制度が完全に実施されると共に、大気汚染の削減と技術革新のためのインフラ投資が必要である。工場や乗り物の有害な排出ガスの規制を強め、廃棄物管理やリサイクル事業を強化し、再生可能エネルギーを促進することは、大気汚染問題や公衆衛生に効果的に取り組むためにとても重要である」と専門家たちは結論付けています。
(抄訳・構成:谷口勇士・ヒューライツ大阪インターン)
出典(英語):国連プレスリリース
Toxic air pollution: UN rights experts urge tighter rules to combat “invisible threat”