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日弁連が「ビジネスと人権に関する国別行動計画」に関する意見書
日本弁護士連合会は2017年7月20日、「ビジネスと人権に関する国別行動計画に含めるべき優先事項に関する意見書」を出しました。
「ビジネスと人権に関する国別行動計画(National Action Plan:NAP)」は、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」)が国連人権理事会で承認された2年後の2013年に、その「指導原則」を各国で具体的に実施するための行動計画の策定を検討するよう、ビジネスと人権に関する国連ワーキンググループから各国に要請がなされたものです。
2017年7月現在、16か国がNAPを策定しています。日本では、政府が「今後数年以内」の策定を2016年11月にジュネーブで開催された第5回国連ビジネスと人権フォーラムの場で表明し、以降その策定プロセスに入っています。
今回の「意見書」は、次の4項目を「優先事項」として国別行動計画に含めることを求めています。
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①主要な国際人権・労働基準、②新興国・途上国のサプライチェーン上の企業活動で発生する可能性のある人権、環境、汚職等の負の影響、③国内の企業活動で発生する可能性のある人権、環境、汚職等の負の影響、について、政府と企業の認識と理解を向上させる具体的措置。
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①公共調達、②開発金融、③投資及び貿易に関する条約及び協定、の各分野を含む、政府が関与する企業活動における人権基準の組み入れと強化。
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①人権デュー・ディリジェンスの実施と苦情処理機関設置に関する公的ガイドラインの策定、②サプライチェーン上の人権リスクに関する状況など非財務情報の開示を一定規模以上の企業に対し義務化、③公益通報制度の通報対象及び保護措置の拡充、④中小企業を支援する研修、相談窓口、専門家紹介などの公的支援制度の整備、を含む施策の実施。
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人権侵害の被害者に対する司法的及び非司法的な救済へのアクセスの拡充。
優先事項とする理由については、それぞれ次のような指摘がなされています。
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人権への企業の影響についての社会的意識の高まりが、国別行動計画が実効的に機能することの前提であるにもかかわらず、未批准の人権条約があり、また国内人権機関も未設置である中で、企業の人権理解が限られた分野にとどまっていること。
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「指導原則」は国家による人権の保護も求めており、政府による一貫した政策が必要だが、公共調達、開発金融、投資協定などの分野での取り組みが不十分であること。
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人権デュー・ディリジェンス、苦情処理システムなどへの企業の対応がなお不十分である一方、政府による実効的な施策も実施されていないこと。また、非財務情報の開示が義務付けられていないこと、適正な情報開示を担保する公益通報制度が不十分であること、ビジネスと人権に関する中小企業の経験が不足していること。
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国家による司法的苦情処理の申立制度は、とくに外国人や海外での被害者にとって容易に利用可能なものではなく、また非司法的な救済制度としての国内人権機関も存在していないこと。
以上のような優先事項の措置は、「グローバルな展開を拡大しつつある日本企業が、人権の尊重とその支援を前提とした事業活動を展開することにより、国際社会の中で信頼とリーダーシップを獲得していくために、不可欠なものである」として、日本政府に実施を求めるものとなっています。
なお、「ビジネスと人権に関する国別行動計画」に関しては、市民社会組織である「ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム」からも、2017年5月16日に「初期提言」が出されています。
<参照>