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国連人権理事会に 、人権教育世界プログラム・第3段階の中間報告を提出(2017年9月)
国連人権理事会第36会期が9月11日から29日まで開催され、人権教育世界プログラム、国連の人権手続きに協力した人に対する民間の軍事・警備企業による報復の問題、シリア、南スーダン、ミャンマー、ブルンジにおける人権状況などについて議論し、決議を採択しました。
人権教育世界プログラム・第3段階
人権教育世界プログラムは、1995年から2004年までの「人権教育のための国連10年」に続く取り組みとして、国連総会が2005年に採択しました。段階をおって、それぞれの段階で焦点を当てた分野および対象について、基本原則や行動計画がつくられています。
第1段階(2005年~2009年)では、初等・中等教育における人権教育、第2段階(2010年~2014年)は、高等教育における人権教育と教員、公務員、法執行担当者などへの人権研修が対象とされ、2015年に始まった第3段階(2015年~2019年)では、第1,2段階の実施の強化とメディアやジャーナリストに向けた人権研修が対象になっています。今会期では、第3段階の中間報告が提出されました。
中間報告をまとめるにあたり、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は各国政府、国内人権機関(人権委員会)に対して、国内で実施された取り組みなどについて情報提供を要請したところ、20カ国の政府と18カ国の国内人権機関から情報が寄せられました。アジアからはフィリピン、韓国、インド、アフガニスタンの人権委員会が情報を提供しました。
中間報告では、第1・2段階の実施の強化について、教育制度における人権教育に関して法制度の整備、あるいは新たな政策の策定、カリキュラムや教材開発が行われたことなどが報告されています。
ドイツは、移民・難民の増加を受け、移住者団体と出版社が教材のなかの文化的多様性、統合、移住に関する表現に関して、多様化するドイツの教室を適切に表現するという共同宣言を採択したことを報告しています。教員の研修については、研修の実施に加えて、教材開発、教員の資格や行動規範に人権を取り入れたことなどを報告しています。
韓国の人権委員会は、教員向け人権研修の実施や、教科書における差別や人権侵害の描写に関する調査を行い、教育関係者、教科書の執筆者や地方公務員を対象に人権に配慮した教科書づくりに関するワークショップを開催したと報告しています。
また、公務員や法執行担当者、軍関係者に対する人権研修を実施したことが多くの報告のなかにあげられています。人身売買や移民の増加に対応するために国際移住機関(IOM)や難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力して研修を行っている例も報告されています
メディアやジャーナリストに対する人権研修について、メディアの報道や取材による人権への影響の観点から、ジャーナリズムの倫理、および暴力の被害者、障害のある人、LGBTなど脆弱な立場にある人たちに関する報道をめぐる研修や、メディアやジャーナリストに向けた人権侵害について、防止策や安全に関する研修などが報告されています。
フィリピンの人権委員会は、映画・テレビに関する審査委員会と、メディア関係者に対する人権研修のカリキュラムを開発することに合意し、メディア関係者、学界、NGO、政府関係者などと検討を始めています。
報告をまとめた国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、公務員など特定の職業に対する人権研修について、評価や研修のフォローアップが不十分であることが課題であると述べています。さらに、メディア、ジャーナリストに対する人権研修は、「伝統的」な対象に比べてまだ十分発展しておらず、その理由として国の政策や担当する機関がないことが報告されている、としています。
人権理事会は中間報告に留意し、各国に世界プログラムの実施をさらに強化するよう呼びかける決議を採択しました。決議はさらに、「持続可能な開発目標」(SDGs)の目標4-7が2030年までに人権教育などを通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする、と述べていることを確認し、人権高等弁務官事務所に各国政府、国内人権機関、市民社会団体などに第4段階のテーマについて意見を求めるよう要請しました。
国連の人権手続きに協力した人に対する報復
人権理事会は2009年、国連の人権メカニズムに協力した人権擁護者やNGOに対して威嚇や虐待などの報復に関する報告を毎年提出するよう国連事務総長に要請しました。2017年9月の報告では、人権条約機関や特別手続きに関連した威嚇や報復に対する措置があげられています。また、人権担当の事務次長が国連の人権機関やメカニズム、基金やプログラムなどの対応に取り組むこと、6月にこの問題に関するウェブサイトが立ち上げられたことなどがあげられる一方、特別報告者などから国連との協議資格の認定が恣意的に延期されるなどNGOの参加を妨げるような問題があるほか、人権理事会などに参加しようとした人の渡航の禁止、逮捕、人権団体の銀行口座の凍結などの報復事例があげられています。
人権理事会は、あらゆる個人、または団体が人権理事会、特別手続き、UPR(普遍的・定期的レビュー)、条約機関、および地域人権メカニズムなどに対するアクセスの権利を有していることを確認し、国連の人権分野における機関やメカニズムに協力した、あるいは協力しようとする個人や集団に対して、政府、非政府団体や個人が威嚇および報復行為を非難し、各国に国連機関や手続きにアクセスする人またはその家族に対して威嚇や報復をしないよう、またそのような行為を防止するよう呼びかける決議を採択しました。
民間軍事・警備会社の活動の規制
世界各地で紛争が起こる中で、国家の軍以外に民間の軍事・警備会社が関わることが多くなっています。紛争における武力の行使や非戦闘員の保護などに関する国際法は主に国家の軍を想定していますが、民間企業である軍事・警備会社による人権の侵害に対する懸念が起こり、その規制や監視に関して国際的な規制枠組みの可能性を検討する政府間作業部会が人権理事会の2010年の決議により設置されていました。
それを受けて、人権理事会は、民間軍事・警備会社の活動から人権を保護し、人権侵害の責任を確保するための国際的な規制枠組みを検討するための政府間作業部会を新たに設置することを決議しました。
人権理事会はそのほか、ミャンマーの人権状況について、主にラカイン州における、ロヒンギャに対する恣意的拘束、拷問、殺害などを含む人権侵害に関して3月に設置された事実調査委員会の任期を延長すること、ブルンジについて、調査委員会の任期を延長しました。また、ブルンジの司法当局が人権侵害の加害者の責任を追及できるよう、調査し、情報を提供する専門家を派遣すること、イエメンに関して、人権侵害の調査を行う国際及び地域専門家を派遣することを要請することを決めました。
保護者が同伴しない子どもの移住者の人権について、特に移動中または国境を越える子ども、あるいは統合、家族の再統合などの政策策定の際に子どもの最善の利益を常に考慮すること、保護者の同伴しない子どもの移住者に国際基準に沿った適切なケアを提供することなどを呼びかける決議を採択しました。
(構成:岡田仁子)
Human Rights Council concludes thirty-sixth session after adopting 33 resolutions and a Presidential Statement (9月29日付 OHCHR)
人権理事会第36会期に提出された報告一覧(OHCHR)