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LGBTIの人の権利に関する文書「ジョグジャカルタ原則」10年ぶりに更新(2017年11月)
ジョグジャカルタ原則とは、性的指向および性自認に関して国際人権法がどのように適用されるかをまとめた国際文書です。人権諸条約に掲げられる権利は普遍的であり、すべての人に平等に認められるものでありながら、LGBTIの人たちが世界各地で差別や暴力にさらされていることに対して、2006年、元国連人権高等弁務官をはじめ、国連人権機関などの専門家によりつくられた文書です。
原則自体には法的拘束力はありませんが、それぞれの締約国に対して拘束力のある人権諸条約にあげられた権利が、性的指向と性自認に関連してどのように表されるのかを示し、国家がとるべき措置をあげ、29の原則にまとめられています。
たとえば、平等と差別を受けない権利について、すべての人が性的指向および性自認に基づく差別されることなく、すべての権利を享受する権利があること、性的指向、性自認に基づく差別が、しばしばジェンダー、人種、年齢、宗教、障害などの他の根拠によって複合的になるということと、国家は性的指向及び性自認を理由とした差別の禁止を憲法や他の法律に規定することや同意年齢に達している合意の上の同性間の性行為を禁止する刑法や他の法規定を廃止すること、公的及び私的領域における性的指向、性自認に基づく差別を撤廃するための立法、その他の措置をとることが要請されるとしています。(原則2)。
また、生命の権利では、性的指向、性自認を根拠に死刑を科されない権利(原則4)、プライバシーの権利では、自分の性的指向、性自認に関する情報を開示するかしないか、自分の身体や他の人との性的を含む関係に関して決定する権利が含まれること(原則6)などがあげられています。新たな権利をつくるというのではなく、既存の国際人権法の枠組みのなかで、LGBTIの人の権利をどのように保障するかということに関する重要な基準となっています。
2011年に人権高等弁務官事務所が人権理事会に提出した、「性的指向および性自認に基づいた個人に対する差別的な法律、慣行および暴力行為」に関する報告は、この原則を自国の政策の指針や参考にしている国があると述べています。
原則の採択から10年を経て、国際人権法が進展していることや性的指向、性自認を根拠とする被害に関する理解が拡大したことに加えて、新たに性表現と性的特徴についても認識が高まったことを背景に、2017年11月10日に「ジョグジャカルタ+10」(YP+10)が採択されました。新たに、性的指向、性自認、性表現、性的特徴(身体の性)にかかわらず、暴力、差別や他の危害から国家に保護される権利、法的に認められる権利、身体的、精神的な自律性、犯罪化・処罰からの自由、貧困からの保護、文化的多様性の権利など9つの権利・自由に関する原則と、これまでの原則について、追加の国家の義務などが加えられました。
(構成・岡田仁子)
<出典>
Yogyakarta Principles plus 10 (英文)