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韓国政府、第3回UPRの勧告に対して見解を発表(2月28日付)

 国連人権理事会は2017年11月9日、韓国における人権状況について第3回UPR(普遍的・定期的審査)を行いました。
 この審査は、2006年の国連人権理事会の創設に伴い新たに作られた制度です。約4年に一度のペースで、国連加盟国193ヵ国すべての国の人権状況が審査されます。2017年11月14日には、日本について第3回UPRが行われました。
 今回の韓国審査では、95ヵ国から218の勧告を受けました。それらに対し韓国政府は、「受け入れる(enjoy the support)」と「留意する(noted)」の2通りで見解を表明しました。
 韓国政府は218の勧告の内、88の勧告に対しては、双方向の対話(the interactive dialogue)の審議の中で見解を表すとともに、残りの130の勧告に対する政府の見解を、後日(2018年2月28日)発表しました。
 審議の中で発表した88の勧告、および後日見解を表した130の勧告について、特に多く出た事項を中心に紹介します。

審議の中で発表した韓国政府の見解

 88の勧告の内、85の勧告に対して「受け入れる」、3つの勧告に対して「留意する」と回答しました。

「受け入れる」と回答した勧告

・国際労働機関(ILO)が定める「中核的労働基準」である4原則(表現の自由、結社の自由、団体交渉権、強制労働の禁止など)を構成する条約の批准:ウズベキスタンなど5ヵ国
・国家人権委員会への継続的支持と独立性の保障:グアテマラ、モルドバ
・(「ビジネスと人権」の取り組みとして)第3回国別行動計画(NAP)の採択:インドネシアなど3ヵ国
・ジェンダー主流化とジェンダー平等の促進:インドなど3ヵ国
・女性と周辺化された人々の権利の保護:セルビアなど3ヵ国
・家庭内暴力(DV)やジェンダーに基づいた性暴力の防止:日本など11ヵ国
・第1・2回UPRにおける平和的手段を用いた抗議に関する勧告へのフォローアップの継続:日本
・人身売買の根絶に向けた取り組み:英国など4ヵ国
・ひとり親家族支援法の改善:ハイチ、ノルウェー
・高齢者のための生活基準の改善、社会保障、貧困の防止、基本年金計画の継続と改善:シンガポールなど8ヵ国
・労働市場における女性参加の促進および管理職や意思決定の場における女性の比率の向上:パレスチナなど5ヵ国

「留意する」と回答した勧告

・移住労働者権利条約の批准:シエラレオネなど4ヵ国
・(ユネスコが定める)教育における差別待遇の防止に関する条約の批准:コンゴ

後日発表した韓国政府の見解

強制失踪条約の批准

:イラク、チュニジアなど8ヵ国
 →受け入れる

死刑廃止について

・死刑廃止を定めた自由権規約第二選択議定書の批准:コスタリカ、アンゴラなど10ヵ国
 →留意する
韓国は、条約と国内法との間の整合性や、関連法の制定及び改正と批准による影響など多くの要素を考慮し、批准を継続的に検討する。
・死刑廃止:ホンジュラス、ノルウェーなど20ヵ国
 →留意する
死刑の廃止及び執行は、刑法の根本に関わる重大な問題であるため、国民のコンセンサス、法的認識、刑事政策における死刑の機能などについて包括的な見直しを必要とする。

拷問等の禁止について

・拷問等禁止条約に付随する選択議定書選択議定書の批准:チリ、カザフスタンなど6ヵ国
 →留意する
韓国は、条約と国内法との間の整合性や、関連法の制定及び改正と批准による影響など多くの要素を考慮し、批准を継続的に検討する。
・拷問等禁止条約の選択議定書への合意、及び批准にむけたプロセスを早めること:チュニジア、ガーナ
 →受け入れる
・拷問防止メカニズムとして効果的に機能するように国家人権委員会の権限を強化すること:モルドバ
 →受け入れる
・拷問を刑罰の対象として法律を改正し、犯罪の重大性に見合うように処罰を課すこと:ザンビア
 →留意する
法律の下で、暴行罪(a crime of violence)は、人の身体に物理的な力を使うものと定義され、残虐行為罪(a crime of cruel act)は精神的または肉体的苦痛を与えるものと定義されている。したがって、拷問とされる行為はいかなるものも、現在の刑法によってすでに刑罰の対象となっている。

④ 差別禁止について

・包括的な差別禁止法(ヘイトスピーチの禁止を含む)の採択及び実施:バングラデシュ、スペインなど18ヵ国
 →受け入れる
政府は在韓外国人処遇基本法に沿って、外国人に対する差別の禁止及び外国人の権利保護のために努力している。政府は、第3次外国人政策基本計画の中に、外国人排斥と人種主義をなくすための諸政策を盛り込んだ。
・LGBTIの権利保護:
 a) LGBTIの権利保護・促進のための差別禁止法(ヘイトスピーチの禁止を含む)の実施:ホンジュラス、スロベニアなど19ヵ国
  →留意する
政府は、憲法および90の法律を通じて差別を禁止するために立法的努力を尽くしてきた。一方で、差別禁止法に関する論争を踏まえて、差別の被害者に対する一般的な救済措置を講ずる包括的(general)な差別禁止法の制定には、相当な検討と意見収集のプロセスが必要である。さらに、差別的な行為に刑罰を科すには、慎重な検討が必要である。
 b)合意に基づき同性との性関係を持った軍人を処罰する法律の廃止:フランス、アイルランドなど6ヵ国
  →留意する
軍事刑法第92-6条の下で同意による同性愛行為が処罰されるか否か、その合憲性は一般法院(裁判所)及び憲法裁判所において未解決にある。政府は司法府の最終判断に従う。
 c)LGBTIのコミュニティの保護・強化及び施設における転向療法などの行為の回避:ウルグアイ
  →留意する
私的に行われる転向療法を政府が禁止することは不適切であると考える。
・人種差別の犯罪化:ナミビア、キルギスタン
 →留意する
人種差別、外国人排斥およびヘイトスピーチを、刑事犯罪を構成する別個の要素として確立することは、刑法上の明確性の原則に反する可能性がある。さらに、別の法律として確立する必要性については、慎重に検討する必要がある。
・悪質な差別者に対する適当な刑事罰を定めた差別禁止法の実施:パレスチナ
 →留意する
政府は、憲法および90の法律を通じて差別を禁止するために立法的努力を尽くしてきた。一方で、差別禁止法に関する論争を踏まえて、差別の被害者に対する一般的な救済措置を講ずる包括的(general)な差別禁止法の制定には、相当な検討と意見収集のプロセスが必要である。さらに、差別的な行為に刑罰を科すには、慎重な検討が必要である。

⑤ 国家安全保障法について

・人権基準に反する国家安全保障法」や北朝鮮に対して挑発的な北朝鮮人権法のような国際人権基準に違反する法律の廃止:北朝鮮
 →留意する
・国家安全保障法の恣意的適用によって不当に拘束された統一支持者を含む全ての政治犯の釈放:北朝鮮
 →留意する
韓国は、最高法院(裁判所)の判決に沿って国家安全保障法の厳格な適用を遵守し、個人の自由を不当に拘束する法の濫用または恣意的適用を許可しない。さらに、法律の適正なプロセスに則って拘束された国家安全保障法違反者を恣意的に釈放する法的根拠はない。

⑥ 良心的兵役拒否について

・良心的兵役拒否者の権利を保障し、代替的な服務の導入:ドイツ、カナダなど12ヵ国
 →留意する
政府は、未解決にある良心的兵役拒否者の処罰に関して、憲法裁判所の判決に従う。朝鮮半島の特殊な安全保障状況と兵役の公平性の確保について検討するには、思想・良心・宗教の自由を理由に軍事義務を果たすことを拒む人々の代替的な服務の導入に対する国民のコンセンサスに基づいた深い議論が必要である。
・良心的兵役拒否者の釈放及び犯罪記録からの削除を検討すること:コスタリカ
 →受け入れる

⑦ 国家安全保障法7条を表現の自由にむけて改正すること

:ドイツ、イラクなど4ヵ国
 →留意する
国家安全保障法の目的は、分裂国家としての特殊な治安情勢下にある韓国の自由民主的秩序を守ることである。政府は、同法の厳格な解釈と適用を遵守し、国の存在と安全保障または自由民主的秩序を脅かす明確な危険性がある場合は表現の自由を制限する。政府は、捜査および尋問の過程で発生し得る人権侵害を防止するための法の適正手続を遵守し、表現の自由を最大限に保障する。また、表現の自由と結社の自由の権利を合法的に行使した個人の不当な起訴や有罪判決の事件は起きていない。

⑧ 国会における女性議員割合を増やすためのクオータ制の導入

:コスタリカ
 →受け入れる
女性国会議員の比率を増やす制度がすでに導入されており、国会の政治改革特別委員会は、国会議員の比例代表選挙で、女性候補者を一定数擁立することが義務付けられている制度の有効性を強化するため、公職選挙法を改正することに合意した。

⑨ 中絶を犯罪とする刑法の廃止

:インド、オランダ
 →留意する
中絶を犯罪とする刑法条項の廃止、又は中絶を容認する条件を拡大することに関しては、生まれていない子どもの生命への権利と、妊娠中の女性の生命、身体および自己決定への権利に関連する重要な問題である。この問題に関しては、いまだ係争中である中絶に関する合憲性の憲法裁判所の判断、他国の立法事例および世論を考慮して検討する。

⑩ 障害のある女性に対する強制不妊手術の捜査および撤廃

:ロシア、アルバニア
 →留意する
障害のある女性に対する強制不妊手術は法律上禁止されており、そのような措置は一切実施されていない。

⑪ 出生登録制度について

・両親の国籍や地位(外国籍、無国籍、難民など)に関係なく全ての子どものための出生登録制度の確立
:イラン、キルギスタンなど6ヵ国
 →留意する
韓国は、国籍を持たない(non-citizen)両親が、難民認定、難民認定の申請、または人道的な地位を得ていることを理由に大使館を通じ た子どもの出生登録ができず、同時に病院の発行した出生証明書で親子の生物学的関係が証明されている場合に限って、子どもが外国人として登録され、韓国に留まることを許可する。
・全ての子どもの出生登録の権利を保障する制度の確立の検討:カザフスタン
 →受け入れる

⑫ 移住労働者の権利について

・移住労働者権利条約の批准:インドネシア、セネガルなど7ヵ国
 →留意する
韓国は、条約と国内法の整合性や、関連法の制定及び改正と批准による影響など多くの要素を考慮し、批准を継続的に検討する。
・移住労働者とその家族の十分な生活手段、住居、医療、教育へのアクセスの確保:コンゴ
 →留意する
韓国は、労働許可を受けた移住労働者に差別なく労働関係法を適用して、移住労働者の居住状況を改善している。また政府は、移住労働者の在留資格にかかわらず、勤労基準法や労働災害補償保険法に基づき、未払賃金や労働災害の補償をしている。一方で、2013年7月1日施行の難民法により、政府は難民申請者に住居補助、医療支援および教育を受ける権利を保障する。在留資格にかかわらず住宅、医療、教育サービスの全面的な支援を保障することは現時点では達成が難しい目標であるが、政府は移住者に与えられる支援の範囲を拡大するように尽力する。
・移住労働者(特に女性)の労働条件の改善及び韓国社会における統合を促進するための措置の採択:ベトナム
 →受け入れる
・職業を変更した移住労働者に対して、ビザの延長や更新の申請が制限されたり、拒否されたりしないように雇用許可制度を改正すること:バングラデシュ
 →受け入れる
韓国は、職場の変更を理由として移住労働者の就労ビザの更新に制限を課さない。韓国に合法的に居住する移住労働者は、職場の変更履歴にかかわらず、就労ビザの延長を申請することができる。
・就学中の未登録移住者の子どもに対する退去強制令後の送還と拘束の停止:バングラデシュ
 →留意する
政府は、未登録移住者の子どもが教育を終了するまでは両親との離散を避け、強制送還の決定を保留し、また14歳未満の子どもを保護拘置しないことなど、未登録移住者の子どもの教育の権利を確保するため、努力を尽くしている。しかし韓国では、子どもが滞在延長・許可を得るために利用される可能性や、未登録の子どもを巻き込んだ犯罪行為への対処の必要性を考慮した場合、未成年者を保護拘置から完全に除外することは困難である。
(構成:金夏琳) 
<出所>
<参考>

(2018年06月29日 掲載)