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韓国国家人権委員会によるスポーツ界における性暴力及び暴力に関する声明
韓国スポーツ界で近年、性暴力や暴力行為を告発する声が相次いでいます。2019年1月、スピードスケートの女性選手が、未成年の時から長期にわたりコーチから性暴力を受けていたことを告発したことが契機となり、スポーツ界で性暴力や暴力行為が蔓延していることが明らかになりました。韓国のメディアは、この選手以外にも被害を訴える選手、そして加害者がほかにも複数人いる可能性を指摘しており、事態は今後も大きくなりそうです。さらには、フェイスブックを通じ、匿名で高校時代にコーチから受けた性暴力を訴えてきた元柔道選手も今回の件を受けて、実名での告白に踏み切ったと報道しました。同時に、このスケート選手による告発をうけ、文化体育観光部(省)が緊急記者会見を行った際に、新たな対策を発表しなかったと指摘しています。また、種目別競技団体、大韓体育会と文化体育観光部(省)を「事実上の職務放棄」と批判するメディアもあります。
これらの動きを受けて、韓国国家人権委員会(国内人権機関)のチェ・ヨンエ委員長は1月22日の緊急声明で、スポーツ人権特別調査団を組織し調査を行うことを発表しました。今回の発表では、同委員会によりスポーツ分野の人権ガイドラインが2008年に作成されたにもかかわらず、政府や大韓体育会によっておろそかにされ、さらに国家人権委員会も十分な監視体制をとれていなかったと述べられています。
今後、特別調査団は1年をかけて過去最大規模の調査を行い、救済措置も行うとしています。特に「被害の実情を明らかにし、根本的かつ包括的な改善計画を制定すること」を課題に挙げ、問題に取り組むとのことです。
声明やメディアが指摘するように、スポーツ分野における性暴力・暴力の被害はその閉鎖性という特徴から明らかにされにくく、被害者がなかなか外部に助けを求められません。しかし、今回の政府機関や各種スポーツ団体の対応に批判が集まるなか、国家人権委員会は勧告にとどまらず、実態解明をするために調査団の設立を発表しました。政府から独立した国家人権委員会として、国内の人権問題の解決に与える影響という意味で、国内人権機関が果たす役割は大きいのではないでしょうか。
(堀口真由)
- 東亜日報「スポーツ界の性暴力、文体部と大韓体育会は共犯者だ」
-アジア・太平洋国内人権機関フォーラム、ニュース記事「NHRIs give substance to #MeToo movement」