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SDGs のターゲットが多数盛り込まれる-子どもの権利委員会の勧告
国連子どもの権利委員会は、2019年1月に「子どもの権利条約」の実施状況に関する日本の第4回・第5回定期報告を審査し、2月1日に採択した総括所見を7日に公表しました。総括所見には数多くの勧告が盛り込まれていますが、今回の際立った特徴として、勧告のなかに国連が2015年に採択した「持続可能な開発目標」(SDGs)にあげられているターゲットが以下のように随所に言及されていることです。
近年、人権に関わる国連文書は必ずといっていいほどSDGsを言及しています。子どもの権利委員会による総括所見においては、日本だけでなく他の国々に対してもSDGs に基づいた勧告が多く盛り込まれています。
日本への主要な懸念領域および勧告(パラグラフ5)
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実施プロセス全体を通じ、条約に従い子どもの権利の実現を確保すること。17の目標の達成を目的とする政策・施策の立案・実施において、子どもたちの意味のある参加を確保すること。
出生登録および国籍(パラグラフ23)
SDGsのターゲット16.9(法的な身分証明の提供)に留意し、無国籍状態の解消など4項目の措置の実施。
虐待、ネグレクトおよび性的搾取(パラグラフ24)
ターゲット16.2(虐待、搾取、人身取引、暴力、拷問の根絶)に留意し、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組み、子ども自身が虐待被害を訴え、報告することができる機関の創設を速やかに進めることなど4項目の措置の実施。
健康および保健サービス(パラグラフ33)
ターゲット2.2(栄養ニーズへの対処)に留意し、新生児、子どもおよび母親の栄養状態を効果的に向上させるなど2項目の措置の実施。
リプロダクティブヘルスおよび精神保健(パラグラフ35)
ターゲット5.6(リプロダクティブヘルス/権利へのアクセス)に留意し、思春期の子どものセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する包括的政策の策定、およびそれらの教育を学校の必須カリキュラムとして実施するなど5項目の措置の実施。
環境保健(パラグラフ36)
ターゲット3.9(大気・土壌・水質汚染による死亡・疾病の大幅減少)に留意し、福島の避難対象区域における放射線への曝露の基準が、子どもにとってのリスク要因に関する国際的に受け入れられた知見と合致することを再確認することなど7項目の実施。
気候変動が子どもの権利に及ぼす影響(パラグラフ37)
ターゲット13.5(気候変動とその影響の軽減)に注意喚起し、気候変動・自然災害に関する子どもの意識・備えを、学校カリキュラムと教員養成・研修プログラムに編入するなど6項目の措置の実施。
生活水準(パラグラフ38)
ターゲット1.3(社会保障制度の実施)に注意喚起し、子どもの貧困・社会的排除への対策など3項目の措置の実施。
教育(障害、ジェンダーに配慮した教育施設、非暴力・包摂的・効果的な学習環境の提供)(パラグラフ39)
ターゲット4.a, とくにいじめを経験する生徒の割合に関する4.a.2に留意し、いじめ防止対策推進法に基づく効果的ないじめ対策など3項目の措置の実施。
乳幼児期の発達(パラグラフ40)
ターゲット4.2(乳幼児の質の高い発達支援と就学前教育へのアクセス)に留意し、幼稚園、保育所および認定こども園の無償化など5項目の措置の実施。
<参照>
国連子どもの権利委員会、日本への勧告を公表(2月7日)ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ
日本の第4回・第5回統合定期報告書に関する総括所見
(ARC 平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト)
SDGsと人権(ヒューライツ大阪)
【プレスリリース】児童の権利委員会日本政府に対し気候政策と石炭火力融資の見直しを勧告(2019/2/10) (気候ネットワーク)