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国連人権理事会第40会期(2月25日-3月22日)の概要

 2019225日から322日まで国連人権理事会の第40会期が開催され、経済的、社会的および文化的権利の実現や環境の分野で活動する人権擁護者などに関する決議を採択しました。
 
経済改革の人権影響アセスメントに関する指導原則
対外債務に関する独立専門家による「経済改革の人権に対する影響アセスメントに関する指導原則」が今会期に提出されました。債務を負う発展途上国などが国際金融機関や援助国の条件に従って経済制度の改革を行う際、その債務国の人々の生活に大きな影響を及ぼすことが長く指摘されており、人権理事会の前身の人権委員会から、対外債務の人権の享受に対する影響、および構造調整政策に関する特別手続きがありました。2008年に現在の名称の対外債務に関する独立専門家になり、2012年に「対外債務と人権に関する指導原則」が人権理事会に承認されています。
2017年に人権理事会の要請を受けて作成された今回の指導原則は、国際金融機関や他の国が課す条件の下で行う政策だけでなく、経済危機、あるいは経済的困難の際に国が独自に改革を行う場合も念頭に置き、国、国際金融機関、民間の金融機関などに対して、改革が国際人権法に則して行われるよう、改革による悪影響、または悪影響の可能性を特定し評価し、それに対応するプロセスを示しています。会期中の独立専門家との対話では、アフリカ諸国では対外債務が拡大しており、経済開発を妨げているとの発言がありました。
人権理事会は、「経済改革の人権に対する影響アセスメントに関する指導原則」に、謝意をもって留意し、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に指導原則の普及を要請し、各国政府、国連機関、他の国際機関などに経済政策の策定や実施の際に指導原則を考慮することを検討するよう促し、先進国に債務削減や免除を呼びかける決議を採択しました(賛成27、反対14、棄権6。日本は反対)。
 
経済的、社会的、文化的権利と不平等、格差
国連事務総長は、経済的、社会的及び文化的権利の実現に関する報告を毎年、人権理事会に提出していますが、今会期に提出された報告では、これらの権利と社会のなかの不平等や力の格差との関連をあげ、「持続可能な開発目標」(SDGs)のより効果的な実施のためにこれらの権利の枠組みが指針となると述べています。人権理事会は、各国に差別や不平等の是正に向けて、法律や政策の実施を図るために人権指標の使用を促すことや法律、政策や慣行における差別を特定し、世代を超えて不平等を持続させる構造的障壁や力関係の不平等に取り組むことを呼びかける決議を無投票で採択しました。
 
環境に関連して活動する人権擁護者
人権理事会はこれまで、人権擁護者の活動の保障や保護を訴えてきましたが、今会期では、人権、環境保護および持続可能な開発への環境に関連する人権擁護者の貢献を認める決議において、環境問題に関して活動する人権擁護者がとりあげられました。
決議は、人権擁護者の安全で健康的な環境の享受に関連する人権の保護促進に関わる役割を認め、環境に関連して活動する人権擁護者が、さまざまな人権擁護者のなかでも最も危険にさらされていることに懸念を表明し、女性、先住民族を含む、環境に関連して活動する、あるいは土地に対する権利について活動する人権擁護者やその家族、コミュニティに対して、殺害や暴力行為、威嚇、強制退去が行われ、彼・彼女たちを貶めるようなキャンペーンや犯罪者として扱うことなどが行われているとしています。
そして、2015年気候変動枠組条約の締約国会議で採択された「パリ協定」の下の義務やSDGsの実現において国家を支援する彼・彼女たちの重要な役割を認め、妨害や不安を感じずに安全に活動できる空間が確保されなければならないとし、人権と環境保全の保護に不可欠な意見、表現の自由、結社、集会の自由の権利をオンライン・オフラインで行使する、環境に関連して活動する人権擁護者を含むすべての人の権利と安全を確保するよう各国に促しています。
また、各国に「ビジネスと人権に関する指導原則」を、国内行動計画を策定することを含め実施し、企業に安全で健康的な環境の享受に関連する権利を含む人権のデュー・ディリジェンスを実施し、影響を受ける集団など関係者との協議を行うことを奨励することを求め、すべての企業には、ビジネスと人権に関する指導原則に則り、環境に関連して活動する人権擁護者を含め、すべての人の生命、自由及び安全を含む人権を尊重する義務があることを強調しています。
 
障害のある子どものエンパワメント
会期中、障害のある子どもの、インクルーシブな教育を含む、人権の享受のためのエンパワメントに関するパネル・ディスカッションが開催されました。人権理事会には、このテーマに関する報告書が提出されており、障害のある子どもの、特に「意見を聴かれる権利」や「参加の権利」の尊重の重要性を強調し、その確保に向けたインクルーシブ教育について、予算の配分や教員の研修などが提言されました。パネルでの基調発言においてバチェレ人権高等弁務官は、すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進するというSDGsの目標4(質の高い教育)を実現するためには、障害のある子どもを国の行動や計画の中心におくことが不可欠だと述べています。
無投票で採択された決議では、障害のある子どもへの子どもの権利に基づいたアプローチとして、法律上、事実上の差別を禁止し、合理的配慮を提供するなどにより障害に基づく差別を防止・撤廃し、国際法の下の義務に則り、障害のある子どものエンパワメントに向け、子どもの権利に基づいたアプローチを開発し実施することを国家に促しています。また、障害のある子どもが自分たちに関わることについて自由に意見を表明し、その意見が障害に関わらず、その年齢と成熟度に応じた重みをもって扱われ、その権利を行使するために障害や年齢に応じた支援が提供されることを促しています。
また、インクルーシブ教育について、障害のある子どもが障害を理由に一般の教育制度から排除されず、自分たちが生活する地域の子どもとの平等を基礎に、インクルーシブ、良質で無料の初等および中等教育にアクセスでき、差別なく高等教育や職業教育にアクセスできるための合理的で適切、効果的な措置をとることを呼びかけています。
 
人権理事会はそのほか、パレスチナ、ミャンマー、シリア、北朝鮮、ニカラグアなどの人権状況、食糧の権利、子どもの権利条約の30周年などに関する決議を採択しました。
(構成・岡田仁子)
 
注:正式名称は、対外債務および他の関連する国際金融に関する国家の義務の人権、特に経済的、社会的および文化的権利の十分な享受に対する影響に関する独立専門家
Independent Expert on the effects of foreign debt and other related international financial obligations of States on the full enjoyment of all human rights, particularly economic, social and cultural rights
 
<参照> 国連人権高等弁務官事務所のサイト(英文)
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=24400&LangID=E
Human Rights Council closes fortieth session after adopting 29 resolutions, including on Syrian Arab Republic, Nicaragua, And Occupied Palestinian Territory、(322日 OHCHR
https://www.ohchr.org/EN/Issues/Development/IEDebt/Pages/Overview.aspx
Evolution of the mandate (任務の変遷)

(2019年03月29日 掲載)