大阪府は、「人権尊重の社会づくり条例」の一部改正、「性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例」と「人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例」の制定に関して条例案の概要を公表し、8月6日から9月4日までパブリックコメントの募集を開始しました。
大阪府は、G20大阪サミット、ラグビーワールドカップ2019日本大会、2025年大阪・関西万博などの世界的イベントの開催、および2019年4月からの改正入管法の施行を受けたさらなる外国人労働者の受け入れなどの状況変化に対応するため、2019年2月に大阪府人権施策推進審議会に対して、3つの条例に関して意見を諮問しました。同審議会は4回の会合を経て、7月1日、答申をまとめ吉村洋文知事に提出しました。答申を受け、大阪府が条例案の概要としてこのたび作成したものです。大阪府は、9月議会（9月26日～12月20日）でいずれも成立させたいとしています。
各条例案の骨子は以下のとおりです。
性的指向及び性自認の多様性に関する府民の理解の増進に関する条例案の概要
条例の目的は、性的マイノリティに関する府民の理解増進を図ることで、性的マイノリティの人々に対する誤解や偏見、差別をなくし、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現をめざすもの。
前文で、性的指向や性自認を理由とした差別は許されないことを明記し府としての姿勢を示したうえで、理解増進のための施策の推進を定めるとしています。
府の責務に加えて、府民や事業者の責務も定め、府の施策への協力や理解への努力義務を盛り込んでいます。
人種又は民族を理由とする不当な差別的言動の解消の推進に関する条例案の概要
条例の目的は、ヘイトスピーチは許さないという府の決意を府民に見える形で示すことにより、府民一人ひとりが社会の一員として解決すべき課題であるとの共通認識をもち、ヘイトスピーチを解消していく機運を醸成することをめざすもの。
前文で、人種又は民族を理由とする不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、人権教育・啓発などを通じて周知を図り、不当な差別的言動の解消に向けた取組みを推進するとしています。
差別的言動の対象を、国のヘイトスピーチ解消法では「本邦外出身者」としている一方、条例はそれだけに限定にしないで、「人種又は民族を理由とする不当な差別的言動」とするとしています。
「不当な差別的言動」とは、憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおる目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は特定人等を著しく侮蔑するなど、特定人等であることを理由として特定人等を社会から排除することを煽動する不当な差別的言動、と定義しています。
不当な差別的言動の禁止を明記する一方、罰則規定については設けず、教育・啓発、相談などの取り組みを実施するとしています。
府の責務に加えて、府民や事業者の責務も定め、府の施策への協力や理解への努力義務を盛り込んでいます。
今後の取り組みの方向として、影響の大きいインターネット上の差別事象については、迅速に拡散防止ができるよう大阪法務局に削除要請を行うとしています。
大阪市は、2016年以来「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」を施行しています。
人権尊重の社会づくり条例の改正案
改正案は、1998年に制定されたこの条例に、府民および事業者の責務を追加するというもの。同条例のもと、これまで同和問題、女性、子ども、障がい者などの人権課題について新たに制定・改正された条例において、府民と事業者の責務に関して規定されているという背景があります。
パブコメ募集は以下のサイト。
http://www.pref.osaka.lg.jp/jinken/jourei/3jourei.html
人権関係3条例（人権尊重の社会づくり・性の多様性の理解の増進・ヘイトスピーチの解消の推進）の改正等に対する府民意見等の募集
＜参照＞
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000021.html
大阪府人権尊重の社会づくり条例（1998年）
https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000339043.html
「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の運用について
（2019年08月08日 掲載）