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COVID-19による先住民族への甚大な影響に懸念表明―国連先住民族特別報告者(5/18)

5月1日に就任した先住民族の権利に関する国連特別報告者のホセ・フランシスコ・カリ・ツァイ氏は5月18日、「COVID-19パンデミック」(新型コロナウイルスの世界的大流行)が健康への脅威だけにとどまらず、先住民族におよぼす甚大な影響について、深刻な懸念を表明しました。以下、その訳文です。

 私は、COVID-19パンデミックによって先住民族のコミュニティがどのような影響を受けているかについて、世界中のあらゆる地域から毎日多くの報告を受けており、それが必ずしも健康問題だけではないことを知り深く憂慮している。
 緊急事態によって先住民族コミュニティがさらに周縁に追いやられており、最も極端な状況として、先住民族の領域(territories)の軍事化が進んでいる。
 先住民族は表現や結社の自由を否定され、企業利益が先住民族の土地や領域、資源を侵略し破壊している。
 いくつかの国では、アグリビジネス、鉱業、ダム、インフラに関連する巨大プロジェクトを強制的に進めるために、先住民族との協議や環境影響評価が突然中断されている。土地と生計手段を失った先住民族は、貧困に追い込まれ、栄養不良の割合が高くなり、清潔な水と衛生設備へのアクセスが不足し、医療サービスからも排除され、病気に対して特に脆弱になっている。
 しかし、このような脅威に直面している中で、「COVID-19パンデミック」に最もうまく対処してきたのは、自分たちの土地、領域、資源を管理し、伝統的な作物生産を通して食料安全保障を維持したり、伝統的な医療の確保などを可能にする自治と自律を達成してきた先住民族にほかならない。
 世界各国の政府はいま、これまで以上に、先住民族が自分たちのコミュニティを守るための独自の計画を実施したり、先住民族に対して差別的でない全国的な施策の策定に先住民族が参加できるよう支援すべきである。
 各国は、先住民族が自分たちの言語でCOVID-19に関する情報にアクセスできるようにすること、および文化的に適切な医療サービスの利用可能性とアクセスを確保するために、緊急の特別措置を講じる必要がある。先住民族のコミュニティでは公衆衛生施設がしばしば不足していることが大きな課題のひとつである。
 先住民族がこのような危機の時代に対処し、持続可能な開発と環境保護という世界的な目標を前進させるために、開発、自己決定、土地、領域、資源に対する権利が確保されなければならない。
 パンデミックは、私たちが変革する必要があることを教えてくれる。個人の利益よりも集団で協力することを大切にし、すべての人を尊重し保護するインクルーシブな社会を構築する必要がある。それは私たちの健康を守ることだけではない。
 
 カリ・ツアイ先住民族の権利に関する特別報告者は、グアテマラのマヤ・カクチケル民族出身。国連や米州機構(OAS)のレベルでも先住民族の権利を擁護してきた経験を持つ。グアテマラのさまざまな先住民族組織の創設者でありメンバーでもあり、駐ドイツ連邦共和国グアテマラ大使を務めた。グアテマラ外務省人権局ディレクター、グアテマラ先住民族に対する差別と人種差別に反対する大統領委員会(CODISRA)委員、内部武力紛争の犠牲者のための国家賠償プログラムの会長を歴任。カリ・ツァイ氏は、国連人種差別撤廃委員会の委員長を務め、各4年の任期で4期連続して選出された経歴を有す。
 
<出典>
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25893&LangID=E (OHCHR)
“COVID-19 is devastating indigenous communities worldwide, and it’s not only about health” – UN expert warns(英文)

(2020年05月25日 掲載)