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国連・表現の自由特別報告者、フィリピンの著名ジャーナリストへのサイバー犯罪防止法による有罪判決を非難(6/16)
マニラ地裁がニュースサイト「ラップラー」の経営者・ジャーナリストに有罪判決
フィリピンのマニラ地方裁判所は6月15日、インターネット上に掲載した記事が名誉毀損にあたるとして、ドゥテルテ政権を批判してきた英語ニュースサイト「ラップラー」のCEO(最高経営責任者)でジャーナリストのマリア・レッサさんと、元記者のレイナルド・サントスJrさんに対して、最長で禁錮6年の判決を言い渡しました。2人は保釈された状態で上訴することができます。
2012年、「ラップラー」が掲載した、実業家男性が麻薬密輸や人身売買に関連しているとする記事について、名誉を毀損されたとして本人がレッサさんたちを告訴しました。レッサさんは2019年2月、捜査当局に逮捕され、サイバー犯罪防止法(Cybercrime Prevention Act of 2012)違反で起訴されていました。
レッサさん側は、法律施行前に記事を掲載したため罪にあたらないと主張していましたが、施行後の2014年に記事のスペルミスを修正したことから、検察は訴追対象になると主張していました。
2012年の記事は、実業家と元裁判官の癒着があると報道していました。その記事が出て4カ月後の2012年9月、同法が施行されたといういきさつでした。
ドゥテルテ大統領はこれまで、レッサさんへの対応に政治的動機はないと主張してきた一方、「ラップラー」を繰り返し「フェイクニュース」の報道機関だと非難し、取材から同社記者を締め出していました。
ケイ特別報告者、フィリピンに上訴審で有罪判決を覆すよう求める
この判決を受けて、国連の「意見・表現の自由の権利の推進と保護に関する特別報告者」であるデビット・ケイさんは6月16日に声明を発表し、フィリピンの地裁判決に非難を表明したうえで、上級の裁判所において判決を覆す責任があると述べました。
特別報告者は、「この有罪判決は、フィリピンにおける表現の自由の保護、とりわけ独立したメディアが国内で機能するための包容力の低さをあらためて示している」と語っています。
「レッサさんと、その記事を書いたジャーナリストを有罪にするために使用された法律は、国際法の下におけるフィリピンの義務と明らかに矛盾している。上訴審が、この有罪判決を覆し、不正義を正すよう強く求める」と特別報告者は述べました。
「レッサさんは何年にもわたって政府から標的にされてきた。この有罪判決は、レッサさん、そして彼女のジャーナリズム、およびラップラーに対する攻撃を背景としてふまえるべきである」と述べています。
「国連が繰り返し指摘しているように、オフラインの権利がオンラインにも同様に適用されなければならず、サイバー犯罪防止法は、現代の人権法の基本的原則に適合していない」と特別報告者は述べました。
特別報告者は、この事件を綿密にフォローしており、関係当局との対話を行っているとしています。
<出典>
フィリピン 著名ジャーナリストに有罪判決 政権批判封じと反発も
(2020年6月15日 BBC日本語ニュース)
Philippines: UN expert decries conviction of journalists, urges reversal
(June 16 ,2020 OHCHR)
Rappler:
VERDICT PRIMER: Legal and factual issues in Rappler, Maria Ressa cyber libel case
(June 14, 2020, Rappler)
Maria Ressa, Rey Santos Jr convicted of cyber libel
(June 15, 2020, Rappler)
After verdict on Maria Ressa, world puts Duterte on trial
(June 17, 2020, Rappler)