MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. ニュース・イン・ブリーフ
  4. 「人権とCOVID-19パンデミックの影響に関する世界の現状」:ミチェル・バチェレ人権高等弁務官による第44会期の国連人権理事会での報告(2020年6月30日)

ニュース・イン・ブリーフ サイト内検索

 

Powered by Google


ニュース・イン・ブリーフ Archives


「人権とCOVID-19パンデミックの影響に関する世界の現状」:ミチェル・バチェレ人権高等弁務官による第44会期の国連人権理事会での報告(2020年6月30日)

バチェレ国連人権高等弁務官は6月30日の人権理事会において、コロナ禍における世界の危機的な人権状況、人権高等弁務官事務所の取り組み、および各国に向けた提言などを具体的に報告しました。以下、全文の翻訳を掲載します。

COVID-19が引き起こす人権課題
世界各地の80を超える現地事務所を含む2019年の国連人権弁務官事務所(OHCHR)の業務に関する年次報告書(A/HRC/43/3)を、人権理事会で共有できるのは光栄である。この報告書は、困難が拡大する状況のなか各国がすべての人権を守るよう支援しているOHCHRの取り組みについてまとめたものだ。

困難な状況が今日さらに厳しさを増している。COVID-19が引き起こす人権課題が加速し続けているなか、多くの国が限られた医療・社会的・経済的能力をもって、COVID-19がもたらす事態に対応している状況に関して、人権理事会に報告するというこのたびの機会をうれしく思っている。

最初の感染者が出てから6カ月が経過した。この感染症が平和と発展の双方を脅かしていることは明らかである。そして、市民的・政治的・経済的・社会的そして文化的権利の実施がさらに求められていることも明らかである。

パンデミックは、公衆衛生や政府の指導に対する人々の信頼を促進し、より強固な社会的・経済的な回復力を促進することによって、人権に基づいた政策を提供するといった保護を強化するために、強力で変革をもたらす措置を採用しなければならないことを私たちに求めている。

社会的に脆弱な人々とCOVID-19
社会の最も脆弱な構成員を保護し、パンデミックの発生とその影響を加速させている根深い不平等の問題に取り組むため、透明性・証拠・原則に基づいたリーダーシップが早急に求められている。

詳細なデータによると、人種的・民族的マイノリティと先住民族はCOVID-19による死亡のリスクがより高く、社会・経済的影響を最も受けていると示している。このことは、アフリカ系の人々に特に当てはまる。アフリカ系の子孫がいるすべての地域で、アフリカ系の人々は不平等な教育や医療アクセス、サービスなどのもとに置かれ、脆弱性をさらに悪化させるいわゆる「必要不可欠」な職業の最前線に位置付けられている構造的差別などの問題に直面し続けている。

先住民族もまた、とりわけ脆弱な状況にある。詳細なデータが存在しないことが先住民族のニーズに取り組む施策の策定を妨げていると同時に、医療やその他の重要な施設に十分にアクセスできないことがパンデミックのリスクをさらに悪化させている。今こそ、そのような放置状態を終わらせるときである。

私は、オーストラリア(翻訳注:以下、初出の国名はすべて太字で表記)とコスタリカにおけるパンデミック対策のなかで、先住民族の健康を保護するために具体的な取り組みが行われていることに注目している。また、パナマはヘルスケアを含む基本的なサービスとインフラを改善する長期的な計画を12の先住民族地域で実行している。ロシアはこのパンデミックの中で先住遊牧民族の医療サービスを改善するための遠隔テクノロジーを導入していると報告している。

COVID-19は、女性や少女を脅かす排除と差別をさらに悪化させている。社会的地位の低い低賃金の職業への集中や、子どもと高齢者ケアのための負担、意思決定からの継続的に排除されるなど、女性や少女に対する社会的保護が欠如している。DVのための年中無休ホットラインの利用者が増加しており、蔓延するジェンダーに基づく暴力もまたこの数か月で拡がっている。こうした状況のなか、女性の健康、経済的参加、平等な権利を得るための厳しい闘いを経て得られた成果が台無しになるような危険性が増している。

高齢者は高い致死率と最悪の医療被害に脅かされている。高齢者介護施設における衝撃的な感染率・致死率は、高齢者介護施設部門に対する、国の機関によるパンデミック対策が、医療の質とサービスと同時に非常に貧弱であることを示している。私は、高齢者の個別の支援を優先するとともに、高齢者が属するコミュニティへの完全な包摂を促進する社会的ケアの改革を提唱するヨーロッパ人権理事会の方針に賛同する。障害者のための不可欠なサービスの提供もまた強化されるべきである。

拘禁施設においてヘルスケアを向上させる必要があり、拘禁代替措置が拡大されるべきである。私たちが提言する感染・密集防止の取り組みに基づき、数多くの囚人を解放している多数の政府の行動を歓迎する。私は、外国人被拘禁者が領事館の支援にアクセスする権利を保護すること、および解放されている人数が世界的に少ないという現実に鑑みて、とりわけ自由が奪われた女性と子どもを解放するよう要請する。

パンデミックは、深刻かつ長期化する子どもへの影響も生み出しているようだ。ユニセフはパンデミックによる経済的影響から家庭を守る緊急の行動がない限り、2020年は国の貧困ラインを下回って生活する子どもの数が15%増加し、6,720万人にのぼる可能性があると報告している。国連世界食糧計画(WFP)は、深刻な栄養失調に脅かされる幼い子どもの数が今年は1,000万人増える可能性があると推定している。学校や訓練プログラムの中断は、貧しい子どもがDVや児童労働、児童婚、女性器切除にさらされる危険性を高めている。私たちは、オンライン上の性的搾取が急激に増加している兆候にも気づいている。

訓練プログラム、高等教育、仕事の中断は25歳以下の若者にも悪影響を与えている。世界で75%を超える若者がインフォーマルな仕事に就いており、そのなかには、COVID-19の影響を強く受けた飲食業や娯楽サービス業のような分野も含まれる。これは、多くの国々に深刻な影響を与えており、国際移住の70%程度を占める30歳以下の若い人々の移住傾向にも同じことが言える。すでに、パンデミックにより、健康・社会経済的・保護の影響が連動しており。移民に対する危機を増大させている。特に、多くの移民が密集した非衛生的な入管施設に拘束されている。ギリシャホンジュラスマレーシアパナマなどでは拘束された移民は感染リスクにさらされているうえ、脆弱な医療システムを擁す出身国に強制送還される危機に直面している。

私は、多くの国で、マイノリティコミュニティの構成員や移民がスティグマ(汚名)に直面しているという報告に心を痛めている。その中には、公務員から汚名を着せられるケースも含まれる。スリランカインドでは、マイノリティであるイスラム教徒がCOVID-19と結びつけられ、ヘイトスピーチのターゲットとなっている。ブルガリアでは、地方当局がロックダウンを実施するために、ロマの居住地域付近にチェックポイントを設けており、ロマの人々は公衆衛生を脅かす存在だという汚名を着せられている。パキスタンでは、宗教的マイノリティに対するヘイトスピーチが集中的に行われている。
COVID-19に感染した疑いのある人々に対するスティグマと脅迫もまた、ハイチイラク、その他の国々で報告されている。

COVID-19禍における国家機関による人権侵害
2週間前の人権理事会での緊急協議[i]において、警察の人権原則に基づく非差別な行動の重要性が強調された。世界中の人々が変化-警察の暴力に関することだけではない-を求める状況において、私はアフリカ系の人々、およびその他の差別を受けるコミュニティのための正義に関する私たちの取り組みを強化する機会として歓迎する。往々にして、法執行担当官による不公平で暴力的な行動は、社会のいたるところの機関に深く埋め込まれている構造的な人種差別を反映しており、COVID-19を含む最近の出来事が示すように、多くの国で緊急かつ根本的な変化が求められる。

差別は人を殺す。人々の社会的・経済的権利を奪い、人を殺す。そして、これらの死と害悪は社会全体に損害を与える。COVID-19は、人権保護の構造的欠陥を明らかにするとともに、その欠陥によってさらに状況が悪化する熱感知器のようなものである。

急速かつ確固たる国の行動および国際的行動がなければ、パンデミックは2030年までに持続可能な開発を達成するという望みを絶つであろう。

とりわけ、世界の最貧国における高い致死率と医療被害、インフォーマル経済における多くの失業、教育の中断、食糧価格の高騰、そして深刻な貧困は、多くの人々を究極の貧困に導き、10数年分の発展の成果を元へ戻してしまった。グテーレス事務総長は「多くの子どもと大人」にもたらす長期的な影響とともに切迫した世界的食糧不足に警鐘を鳴らしている。

私は、世界の全てのリーダーに対し、この瞬間の重要性を認識し、危機の中で国々や人びとを支援しようと奮闘している国際機関の活動を支えるために緊急行動をとることを要請する。

COVID-19は、人々の言論や表現の自由、生活に影響する意思決定に参加する権利などを制限する手段として世界中で悪用されている。ロシア連邦中国、コソボ(注1)、ニカラグア、そしてその他の多くの国々において、政府のCOVID-19への対応を批判するジャーナリストやブロガー、市民活動家に対する脅迫についての報告に留意している。

エジプトについては、表現の自由、結社の自由、平和的な集会の自由が制限されていることに懸念を抱いている。COVID-19の感染拡大をめぐるオンライン上の議論に対して、および人権擁護者やジャーナリスト、政治活動家とその家族を標的にした強力な資産凍結・脅迫・逮捕など市民社会に対する弾圧が行われている。

エルサルバドルのCOVID-19への対応については、国の機関の権限と独立をむしばむ過剰で恣意的な措置に関して非常に多くの報告が寄せられている。最高裁判所の憲法部署によって作られた規則や、立法議会によって採用された法律が無視されている。

言論の検閲と犯罪化は、パンデミックに対処するための不可欠な情報をも規制しているようだ。そして、そのような権利-透明で説明責任を有す意思決定に参加する権利も含まれている-を尊重することによってのみ、政府の方針に対する人々の信頼を呼びおこすのである。有害な虚偽情報の流出に対しては、信頼できる正確な情報を権威ある情報元から提供し、社会的メディアリテラシーを促進させる努力によって克服されるべきである。ジャーナリスト、人権擁護者、市民社会活動家たちは政府のCOVID-19対応の欠点を特定し、解決する手助けをすることが出来る-そして、弾圧は彼らの権利に対する不当な暴力であるだけでなく、パンデミックの影響を防ぎ、緩和するための政策効果に悪影響を与えているのである。

リーダーにとって、その奉仕すべき人びとに対して、一貫した、信頼できる、事実に基づいたコミュニケーションを維持することが不可欠である。

私は、韓国によるCOVID-19パンデミック対応において、誰ひとり取り残さないことをめざしたオープンで対話的なアプローチを奨励する。同政府は高齢者、ホームレス、LGBTIコミュニティ、非正規滞在者といった韓国社会で最も脆弱な人々に届くような包括的な政府方針が必要であることを認識している。患者が非正規滞在者であることを当局に通報しなければならない医療機関の義務を免除したり、最近ではLGBTIの人々に対するスティグマ拡大を受けて匿名の検査を可能にした政策を賞賛したい。私は、韓国政府のパンデミックへの対応から学んだ教訓を積み上げて包括的な差別禁止法を検討し、迅速に採択することを奨励する。

対照的に、ベラルーシブラジルブルンジニカラグアタンザニアアメリカなどでは、ウイルス感染の実態を否定し、核心的な課題を分極化させるような声明によって、ウイルスの拡大を抑えて医療制度を強化する努力を弱体化につながり、パンデミックの厳しさを悪化させるかもしれないと懸念している。

紛争とCOVID-19
COVID-19は地域における平和の脅威を悪化させている。紛争によって重要な医療サービスが既に崩壊しつつある国にいる人々はパンデミックの多元的な脅威に対して著しく脆弱である。私は医療ケア、医療支援が全ての人に届くことを確実にするために、特定の人たちを支援しないという措置を緩和もしくは停止すべきであるという要請を繰り返し強調したい。そして、私のアントニオ・グレーテス事務総長に対する強力な支援が、パンデミックに対する有効な取り組みを可能にする世界的な停戦を呼び起こすことを再確認する。

イエメンでは、グテーレス事務総長による停戦の呼びかけに対する当初の肯定的な対応にかかわらず、武力紛争が国中で継続している。コレラやマラリア、デング熱と共にCOVID-19が急速に広まっていることから、人道的支援が妨げられることなく届けられることは不可欠である。COVID-19による高い重症化率と致死率は、イエメンの医療・衛生インフラの崩壊の拡大と5年に及ぶ紛争によって生み出された市民の貧困と脆弱性を示している。多くの医療従事者は防護設備がないうえ、報道によると、その大半が無給である。OHCHRは、COVID―19にり患している疑いのある人々や北部での感染について報告した医療従事者が脅迫や逮捕されるケースを確認している。

人道的支援へのアクセスはシリアでも非常に危機的である。シリアでは、10年近く続く内戦で繰り返し爆撃されている医療施設が急増している。OCHA(国連人道問題調整事務所)はシリアの80%の人々が貧困ライン以下の生活をしていると推定しており、WFP(国連世界食糧計画)はすでに食糧危機があることを記録している。国境を越えたアクセスを継続的かつよりいっそう行うことが不可欠であり、アルヤルビア国境を再開放すると共に、安全保障理事会による越境支援の延長[ii]を強く要請する。

私はCOVID-19の影響が人々の苦しみや貧困、怒りを増大させるにつれて、サヘル地域における最近の重大な人権状況が、さらに悪化するかもしれないと懸念している。すでに、武装過激派組織がマリ中部・マリ北部ブルキナファソ南部チャド湖周辺の一部の地域のコミュニティで影響力を強めている。ブルキナファソとマリ中部のコミュニティの中には、武装したコミュニティベースの組織-そのうちのいくつかは政府当局の支援を受けている―を形成しているところがある。そして、それらが殺人、誘拐、児童や成人の徴兵、強奪を行っているという報告が増えている。武装集団による人権侵害の増加が、数々の国で確認されている。避難を余儀なくされるケースが各地で急増しており、人々のCOVID-19感染に対する脆弱性を悪化させている。全てのG5サヘル共同軍構成国[iii](マリ、モーリタニア、ブルキナファソ、ニジェール、チャド)に対して、治安部隊による人権侵害の申立てについて確固たる説明責任を負う努力をするとともに、可能な限り文民統治の存在と市民へのサービス提供を強化することを私は要請する。OHCHRは、地域における存在感、およびG5サヘル共同軍のコンプライアンス枠組みの取り組みをいっそう強化する方針だ。

南スーダンでは、COVID-19が人々の極度の脆弱性をより悪化させている。OHCHRが確認した最近の報告によると、ほとんどではないにしろ、多くの南スーダン人は適切な医療ケアシステムから恩恵を享受していない。さらに、知事の任命を含む平和合意の再活性化のペースが遅いこと、および根本的な原因に取り組んでいないことにより、新たな暴力が生み出されるという深刻な危険にさらされている。コミュニティを拠点とした民兵と自警団が軍隊並みの武器で武装して、政府と反政府勢力の代理戦争として使われており、これらの現地化されたコミュニティ間の戦闘によって、すでにたくさんの犠牲者を出している。

COVID-19がもたらす深刻な影響
人口のほぼ60%が貧困ライン以下で生活しているハイチは、長年にわたる危機の後に、COVID-19の社会・経済的影響が致命的となった-社会的不満や犯罪、混乱がさらに悪化した-国の明白な例である。

ジンバブエは、深刻なCOVID-19が困難を増幅させている国のひとつである。5月の報道によると、主要野党の3人の女性がCOVID-19に伴う制限措置という名目で拉致され、拷問を受けた-そして、後に「冤罪」を背負わされ、収監された。
一方で、裁判所による最近の判決は、正義と統治の安定した基盤に通じる道を示した。それらの判決とは、政府は権利として水へのアクセスを提供しなければならない、政府は医療従事者たちに保護設備を提供しなければならないというもの。また、障がいのある人々がアクセスできる形でパンデミックに関する情報を得る権利を有すること、そしてロックダウンが実施されているなか、法の施行において、人権およびジャーナリストの仕事を尊重しなければならないという判決である。このような方向性は、多くの国々にとって、新しく変革を伴う進路構築の追い風となる。

将来に向けて
パンデミックはまだ終わっていない。テドロスWHO事務局長は6月29日、私たちに「最悪の事態はまだ来ていない」と述べた。私たちはパンデミックとその社会経済的影響を克服するために協働し続ける必要がある。

人々の脅威が可能な限り早く克服されることを確実にするために、そして効果的な回復を可能にするために、政策は社会をひどく脆弱にしている不公平と保護とのギャップに取り組まねばならない。将来における危機を防ぐために、政策は前を向いて、人権保護を強化しなければならない。グテーレス事務総長による「人権のためのアクション要請」は、健康的な環境の権利を含む、権利に基づいた回復を実現する協同行動のための強力で原則に基づいた枠組みである。

誰一人取り残さないようにコミットしながら、公衆衛生や社会経済的支援、および再生可能なエネルギーについて行動を起こすといったパンデミックに対するヨーロッパ人権理事会の提案は、有効なリーダーシップの一例である。いくつかの国では既に、パンデミックにより引き起こされた不景気の結果、産業界から規制緩和してほしいという要請-しばしば人権侵害が報告されている部門からのものも含む-が出てきていることを注視している。そのような要請には応じてはならない。

私たちは環境的に持続可能、公平・公正かつ包摂的な新しい社会を構築しなければならない。全ての国は、その経済支援・援助において、受益会社が国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」[iv]に従わなければならないと明文化するよう奨励する。この条件はすでにデンマークで採用されているビジネス支援措置に盛り込まれている。

パンデミックとその影響は、世界的に協調して取り組まれねばならない。グローバルな公共財として考えられるワクチンもその一つである。ある人の富、性別、移民の法的地位(在留資格)によって、個人の命だけでなく、経済や社会の未来も救うワクチンへのアクセスの可能性を決めてはならない。国際協力の弱さ、そして公衆衛生をめぐる個人の利益、あるいは政治的利益を優先させる行為は、感染のサイクルを繰り返し、経済回復を妨げる。

迅速かつ効果的な方法は、アフリカを含む多くの発展途上国でとられている。それらは、たとえば接触者の追跡方法やコミュニティに根ざした公衆衛生など地域の知恵によるものだ。しかし、感染は広まっており、それを抑えるためには、多くの国は医療システムを強化し発展の権利の達成を確実にするために、債務救済や直接的な財政投資を含む持続的な国際的支援を必要としている。

COVID-19の人権への影響に対する効果的な対応を促進するために、OHCHRは緊急措置、市民スペース、拘禁、先住民族、移民、マイノリティ、女性、人種差別、LGBTIの人々、高齢者、障害者に関する詳細なガイダンスを発行している[v]。特に影響を強く受ける脆弱なグループを明確に特定することを可能にし、被害を防ぐ効果的な方針実施に向けた支援をするために、私たちは10の人権指針に関する枠組み[vi]を発行している-SDGsと世界的な人道支援計画[vii]に関する国連によるあらゆる社会・経済的対応を導く、枠組み文書が付記されている。

そうした重要な取り組みをさらに進めるために、そしてパンデミックへの対応の中心に人権を据えるために、OHCHRはサポートしていく必要がある。世界的な社会・経済的予想は、少なくとも今後2年は世界中の人間開発指数が劇的に低下すると予想している。私たちはあらゆる水準で、多額の費用をかけて人々の健康と安全、幸福を維持する確固たる努力と共に行動し共有する。しかし、的確に目標を定めて社会的団結、包摂、公正に対処しなければ、これらの取り組みはコミュニティ全体を押し流そうとする喪失を埋め合わせることができない。

私たちは復興のためには人権が不可欠であることを認識しなければならない。この深刻な事態において、この先もずっと安定した、予測可能な資源と確実な政治的意思に頼らなければならない。この危険はすでに深刻である。強化されたパートナーシップはその危機を和らげることができる。あなたたちの取り組みが、今、もしくはいつか変化を生むであろう。

翻訳:坂本和歌子(ヒューライツ大阪インターン)
 
<出典>
※以下、(注1)は原文注、は翻訳者注。中見出しは翻訳者による
  • 1)コソボついての言及は、いずれも国連安全保障理事会決議1244(コソボ和平プラン)に基づくものである。

  • [ii] シリア越境人道支援を同国政府の承認なく隣国から行うことができるもの。2020年7月11日の安全保障知事会決議では「トルコとの国境一ヶ所からの搬入を一年間継続」が認められた。
    http://unscr.com/en/resolutions/doc/2533(英文)

(2020年08月27日 掲載)