一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)は2020年8月12日、「今こそSDGsを軸にした対策を」と呼びかける声明「コロナ時代のSDGs~SDGs市民社会ネットワークからの提言と、市民社会の役割」を出しました。新型コロナウイルスに関する同ネットワークからの声明は、3月27日に続き2回目となります。
声明ではまず、前回の声明以降に顕在化した課題として、①生命の選別―崩壊の危機に瀕する医療・介護現場で資源の不足により生命に優劣をつけようとする動きがあったこと、②社会的差別と偏見―特定の業種や地域への偏見が助長され、陽性者の情報が暴露されるなどネット上や生活の場で差別や暴力が見られたこと、③環境問題と災害リスク―環境モニタリングの自粛や感染対策による使い捨て用品の需要増が長期的な環境問題につながる懸念と、災害支援物資や避難所の確保が不十分で災害弱者の救援に困難が予想されること、④暴力の増加―社会的に弱い立場に置かれた脆弱な人々に対する暴力や虐待が拡大したこと、⑤脆弱層や少数者を支援する制度の不備―コロナ対策の諸制度にジェンダーや少数者への配慮が欠けていること、⑥雇用状況の悪化―失業者数が増加し、シングルマザーなどへの影響が懸念されるとともに、対策を担う公的機関や民間団体もコロナの影響を受けていること、⑦国際協力―どの国もSDGs達成のための資金や資源が減少し、地域に根差した支援を担うNGOも人員派遣や資金面で困難を抱えていること、の7点を挙げています。
一方、こうした課題を解決しようとする多様な動きも市民社会が深く関わったかたちで始まっているとし、様々な地域で生活困窮者への支援の動きが始まっていること、地域独自のSDGs円卓会議の設立などマルチ・ステークホルダーによる課題解決の仕組み作りが見られること、環境問題や気候変動に関して企業や投資家などへの働きかけの動きが進んでいること、コロナの予防・診断・治療の研究開発と途上国への供給の国際協調の枠組みが設立されて市民社会の参加も進んでいること、などの事例を紹介しています。
その上で声明は、コロナ危機の中で市民社会には、①最も遠くにいる人やあらゆる当事者の声を社会に届け、政策決定に反映させる役割、②困難な状況にある人々に必要な支援を届ける役割、③様々なステークホルダーを結びつける、結節点としての役割、の3つの役割があるとし、当事者の声や「誰一人取り残さない」というSDGsの理念の重要性を改めて強調しています。
<出典>
<参考>
(2020年08月16日 掲載)