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バチェレ人権高等弁務官、報道と表現の自由の意義を強調~COVID-19下におけるジャーナリストに対する不当な弾圧に対して(9/1)

 ミチェル・バチェレ人権高等弁務官は9月1日に開かれた国連総会のサイドイベント(ジュネーブ)において、報道と表現の自由についてのスピーチを行いました。以下、翻訳文です。

このイベントで講演できることを光栄に思います。
 
メディアの自由は、民主的で自由な参加型社会を実現するために不可欠です。ジャーナリズムは、あらゆる種類の政治的、経済的、社会的な問題への理解を深め、重要な‐そして、このパンデミックの状況下では命を救う-情報を提供し、あらゆるレベルでガバナンスを維持し、透明性と説明責任を果たすことを推進します。
 
ジャーナリストの安全と、検閲や脅迫なしに調査を遂行し、情報発信する能力は、「持続可能な開発のためのアジェンダ」を実現するための重要な要素です。実際、SDGsは、情報の自由の権利や、その他の基本的人権の履行を明示的に要求しています。
 
しかし、世界中のジャーナリストは、検閲、監視、抑圧、脅迫、身体的攻撃に直面しています。多くの場合、これらの攻撃は、組織犯罪や武装集団、企業を含む民間人によって行われているように見えますが、政府高官によって扇動されたり、容認されたりすることもあります。女性ジャーナリストは、性的暴力の脅迫やオンラインでのヘイト・キャンペーンなど、標的にされるリスクが高いことが多いです。また、殺害を含むジャーナリストに対するこれらの犯罪は、不十分な捜査や起訴で済まされることが多いのです。
 
国連のアントニオ・グテーレス事務総長が2019年、ジュネーブ国連特派員協会(ACANU)のメンバーに語ったように、「この10年で1000人以上のジャーナリストが、かけがえのない仕事をしている間に殺されている。そして、10件のうち9件は未解決で、誰も責任を問われていない。一方で、何千人ものジャーナリストが、正当な手続きなしに、攻撃されたり、嫌がらせを受けたり、拘束されたり、偽の容疑で拘禁されたりしています。
 
武力紛争の多くの状況において、国家と武装グループの両方がジャーナリストを意図的に標的にすることが、ますます顕著になっています。抗議や批判をしたことでジャーナリストが標的にされる場合と同様に、これらの攻撃は市民社会のすべてを黙らせることを意図したものであり、これは深刻な事態です。
 
さらに、テロ対策、国家安全保障、不敬罪、扇動などの法律や、「虚偽」や「フェイクニュース」の流布を曖昧に禁止する法律は、世界の多くの地域で、独立した報道を制約し、取り締まるために利用されています。
 
そしてここ数カ月、検閲、弾圧、脅迫、攻撃、そして不処罰の傾向が、世界的なパンデミックの文脈の中で激化しています。いくつかの国では、パンデミックが政治化され、その影響を政敵のせいにしようとする企てが、COVID-19の蔓延とそその防止対策の妥当性について、事実に基づいた情報を報道しようとするジャーナリストに対する脅迫、逮捕、中傷などのキャンペーンにつながっています。
 
いくつかの政府は、この公衆衛生上の危機を、批判や反対意見に対する取り締まりをより広範囲に-そして不当に-行う口実として利用しているのではないでしょうか。これらの措置には、報道機関・ウェブサイト・インターネットの閉鎖や検閲、ジャーナリストの恣意的な逮捕、危険で混雑した収容施設での拘禁などがあげられます。これらの慣行は、メディアの自由の享受を不均衡に制限するもので、国際法に違反しています。
 
私たちは、これらの行為が公衆衛生および人権、そして民主主義を害していることを明確にする必要があります。
 
正確な情報を否定されたり、政府の行動や誤報によって公式声明への信頼が損なわれたりするならば、人々は感染リスクを効果的に軽減することができません。
 
正確で信頼できる情報へのアクセスは人権であり、他の多くの基本的権利の基礎を形成しています。それは、人々が自分たちの生活に影響を与える決定に参加する能力、および政府の応答性、説明責任、透明性を維持するために極めて重要です。
 
ジャーナリストやメディア労働者が、自分たちの報道のために犯罪者にされたり、嫌がらせを受けたりしてはならないのです。すべての逮捕、およびジャーナリストに対するすべての攻撃は、社会全体にメッセージを送っています。真実の探求、および知る権利、自己表現する権利、および参加する権利は、政府当局によって保護されていません。
 
このような憂慮すべき傾向を覆すことは、私たちの共通の責任です。「ジャーナリストの安全と不処罰の問題に関する国連行動計画」訳注は、世界の平和、民主主義、発展を強化するために、ジャーナリストとメディア労働者にとって自由で安全な環境を創造することを目的としています。それには多くの実践的な提言が含まれており、各国および様々なステークホルダーがこれらのコミットメントに基づいて行動することが不可欠です。
 
私たちはすべての人のために、自由と権利のスペースとしてのジャーナリズムのビジョンを前進させることができる、と私は確信しています。
 
攻撃を受けながらも、批判的に調査報道を続けている人々の勇気を、私はここに称えます。
人権高等弁務官事務所と国連はジャーナリストの権利のために立ち上がり続けます。(2020年9月1日)
翻訳:坂本和歌子(ヒューライツ大阪インターン)
 
訳注:
2010年に「コミュニケーションの発展のための行動計画」(IPDC)政府間会議がきっかけとなって議論が始まり、2012年に策定された。ジャーナリストの安全に関連する問題を処理するための関係機関メカニズムの確立、表現と情報の自由を擁護する法律とメカニズムの開発を支援すること、既存の国際ルールと原則を実施するための取り組みを支援することなどを盛り込んでいる。
https://en.unesco.org/un-plan-action-safety-journalists (ユネスコのサイトより)
 
<出典>
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=26197&LangID=E
Side-event in Geneva for the freedom of the press and freedom of expression
Statement by Michelle Bachelet, UN High Commissioner for Human Rights
(UN General Assembly 2020, 1 September 2020)

(2020年09月23日 掲載)