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第46会期国連人権理事会、COVID-19のワクチンの公平な分配、マイノリティに対するヘイトスピーチ、ミャンマー情勢などについて決議(2/22-3/23)
2021年2月22日から3月23日まで第46会期国連人権理事会が開催され、新型コロナウィルスのワクチンに関する決議などが採択されました。
新型コロナウィルス感染症への対応
今会期、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界各地における人権の影響に関する国連人権高等弁務官の報告書が提出されました。報告書は健康、生活、教育などへの影響、また子ども、先住民族、マイノリティ、LGBTIの人々、障害のある人々、高齢者、女性などへの影響と人権高等弁務官事務所(OHCHR)の取り組みなどをあげており、不平等や格差への対応、情報の自由な流れと安全で包摂的な参加の確保などについて勧告しています。
人権理事会は、すべての国が公平に、かつ安価で普遍的にCOVID-19のワクチンへのアクセスを実現するための決議を採択しました。決議は、ワクチンの接種開始以降、ワクチンの大部分が裕福な国に集中し、貧しい国でのアクセスが遅れており、先進国と発展途上国との間で分配に大きな不平等があることに懸念を表明しています。そのうえで、国内外の不平等に対応するための政治的コミットメントや国際協力などの必要性を確認しています。
また、社会権規約委員会のワクチンへの普遍的で平等なアクセスに関する声明をはじめとする条約機関や特別手続きによるワクチンに関わる国家の人権義務に関する指針などに留意し、各国および関連するステークホルダーに、安全で品質の高い、アクセス可能で安価なワクチンの公平・透明・タイムリーなアクセスを保障するための適切な措置をとることを呼びかけています。
また、ワクチンの不平等な分配につながるワクチンをめぐる投機、不当な輸出管理や備蓄を防止するよう直ちに措置をとること、国家がそのような経済的、財政的または貿易措置を取らないようにすることを求めています。
「子どもの売買と性的搾取に関する特別報告者」は、COVID-19のパンデミックによる貧困や不平等の悪化により脆弱な立場にいる子どもの状況がさらに悪化したこと、子どもの保護に関するサービスや制度が停止されるなど影響を受けたこと、子どもが学校の閉鎖などで孤立したこと、一方で子どもポルノを含むオンライン上の子どもの虐待や搾取が増加していることを報告しています。
また、アフリカ系の人を含む、民族的、宗教的および言語的マイノリティに関する人権高等弁務官の報告書も、COVID-19およびその対応のための緊急事態宣言下のマイノリティに対する影響やヘイトスピーチの悪化などを取り上げています。
マイノリティに対するヘイトスピーチ:3段階の対応
「マイノリティの問題に関する特別報告者」は今会期、ヘイトスピーチ、ソーシャル・メディアとマイノリティをテーマとした「マイノリティ問題に関するフォーラム」による提言の報告と、同じくヘイトスピーチなどに関する報告書を人権理事会に提出していました。報告書は、COVID-19と同時期にソーシャル・メディア上のヘイトスピーチも拡大し、マイノリティがその主な標的であるにもかかわらず、ヘイトスピーチに対する取り組みは最も影響を受けているはずのマイノリティに焦点が当てられていないと指摘しています。また、各国は民族や宗教、言語に基づく憎悪や差別、暴力の扇動など特定のヘイトスピーチに対する法律をつくらなければならないとし、ソーシャル・メディアに民族や宗教、言語、ジェンダー、性自認などを理由とするヘイトスピーチを特定する方針や手続きを持つことを求める法律を制定することを提言しています。
また、各国にオンライン上のヘイトスピーチに対して迅速に捜査し、責任を追及し、被害者を救済すること、および各国および人権高等弁務官事務所を含む国連機関に対して、ソーシャル・メディアでのヘイトスピーチに関する自主的な行動規範を策定に着手することなどを提言しています。
同特別報告者は報告書の提出にあたって、ヘイトスピーチに対して国際法上国家が行わなければならないこととして、最も重大な形態のヘイトスピーチを犯罪とし、それより重大ではないヘイトスピーチを禁止し、さらにそれより重大ではないが、社会一般において偏見や人種主義、不寛容が引き起こし得る危害に対応するための措置をとる、という3段階があると述べました。
法執行におけるアフリカ系の人々に対する構造的差別
2020年、米国における警察のアフリカ系米国人に対する殺害、取り締まりに対する抗議の拡大を受けて、人権理事会でもアフリカ系の人々に対する法執行における差別や暴力、過剰な武力の使用および刑事司法の構造的差別を非難する決議を採択し、人権高等弁務官に第47会期(2021年6月)にそのような差別や暴力に関する報告を提出するよう要請していますが、今会期では、その問題に関して、口頭での報告が行われました。
人権高等弁務官は、米国で抗議行動拡大のきっかけとなった、ジョージ・フロイドさん殺害に関する裁判が開始されるなか、裁判に至らない事件は数多くあると指摘し、警察、その他の公務員による犯罪の不処罰は国の主要な価値や結束を大きく損なうものだと述べました。また、警察や司法制度は社会の一部であり、社会の構造的差別に対応しなければならないとも述べました。
ミャンマーなど特定の国に対する決議
人権理事会は2月12日にミャンマーに関する特別会期を開催し、同国で軍が選挙による政府を排除したことを遺憾とし、アウンサン・スーチー国家顧問、ウィンミン大統領をはじめ恣意的に拘束されている人々を即時、無条件に釈放することなどを決議していました。今会期では、理事会は軍による政府の排除を非難し、大統領、国家顧問やその他の政治家、公務員、ジャーナリストや市民など拘束された人々を直ちに釈放することを呼びかけ、軍および警察による無差別の致死力のある武器の使用を非難し、抗議行動に対して過剰な力の行使を控えることを求める決議を採択しました。
人権理事会は、そのほか、スリランカ、ベラルーシ、シリア、南スーダンなどについても決議を採択しています。
(構成・岡田仁子)
<参照>
Human Rights Council Concludes Forty-Sixth Regular Session after Adopting 30 Resolutions and One Decision(2020年3月24日OHCHR)