入管法の「改正案」について、与党は5月18日、今国会での採決を見送る方針を発表しましました。今回の法案は廃案となります。
法案には、退去強制命令が出ても送還に応じない人の収容長期化を解消するとして、難民認定手続き中の送還停止規定の適用を新たな相当の理由がなければ2回までに制限すること、送還妨害行為などに対する退去命令と違反への罰則の新設、入管当局が選定する「監理人」の監督のもと施設外での生活を可能にする「監理措置」の導入、などが盛り込まれていました。
法案は、日本も批准している難民条約をはじめとする国際人権諸条約に反する内容であったことから、国内だけでなく、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、および人権理事会が任命する特別報告者などによる多くの批判や提言、勧告などが出されていました。
さらに、2021年3月に名古屋出入国在留管理局の収容施設でスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が亡くなる前のビデオ映像の開示をしないなどの入管庁の対応に、野党や市民社会から強い批判の声があがっていました。
移住連、全国の弁護士有志が声明
法案に反対し、4月16日以来、国会前で入管法改悪に反対するシットイン(座り込み)に取り組んできたNPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は5月19日に「これが市民社会の総意である-「入管法改正案」、事実上の廃案を受けて」を発表しました。
声明は、「廃案にいたるプロセスは、『一人ひとりが声をあげれば、社会を変えることができる』という希望を感じさせるものでもありました。趣旨に賛同する人は誰でも参加できるという開かれたシットインの空間には、多様な人びとが集まりました。SNS上に溢れる抗議のメッセージは、声をあげられない移民・難民に思いをはせ、声なき声、失われた声を聴こうとした一人ひとりの市民のつぶやきの連なりでした」と述べています。
そのうえで、「今この時間にも、自分の帰属する社会から『追放』されることを怯える非正規滞在者が『ここ』に暮らしています。戦後一貫して、移民・難民の人権を踏みにじり、外国人差別を作り出してきた入管体制は今も続いているのです」と現状を明らかにしています。
そして、「時代錯誤の入管体制を根底から変革し、移民・難民の人権と尊厳が保障される政策、公正な移民社会の確立にむけ、これからも声をあげていきましょう。そして誰もが人権と尊厳を保障され、自分らしく生きられる社会をともにつくっていきましょう」と結んでいます。
また、「入管法改悪に反対する全国の弁護士有志」が5月21日、300名超の連名で「入管法改悪法案の廃案を受けて」という声明を発表しました。声明は、私たちは「ウイシュマさんの死亡事件の真相を明らかにするまで」、「原則収容主義を廃し、入管収容に司法審査や収容期間の上限を導入するまで」、「国際人権法に適った在留特別許可を法律で明示するまで」、「国際基準に則って難民が難民として認定される制度を実現するまで」、「何より移民・難民の人権と尊厳が保障される社会を実現するまで」絶対に諦めませんと述べ、「本当の勝負は、これから」と結んでいます。
<出典>
https://migrants.jp/news/voice/20210519.html
【ステートメント】これが市民社会の総意である-「入管法改正案」、事実上の廃案を受けて-(移住連)
note:本当の勝負は、これから。 (koichi_kodama (児玉晃一) )
(2021年05月25日 掲載)