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国連人権理事会、清潔で健康的な環境を人権と認める決議‐日本は棄権(10/8)
9月13日から10月8日まで開催された国連人権理事会第48会期で、10月8日に環境の権利を人権と認める決議が採択されました。
会期初日の9月13日、バチェレ国連人権高等弁務官は、人間の作為・不作為による気候変動、環境汚染と自然の喪失が、食料、水や住居などの権利だけでなく人の生命に影響を及ぼしている、と環境の危機について警鐘を鳴らしました。この数カ月で大規模火災、洪水や熱波が起こっており、マダガスカルでは世界食糧計画(WFP)によると「世界で最初の気候変動が引き起こした飢餓」が起きていると報告しました。また、世界各地で食糧難、水不足が起き、それが悪化することが予測されており、気候変動によって住民が移住を強いられていると述べました。さらに高等弁務官は、環境保護に取り組む活動家が脅かされ、殺害される事態が起こっていることをあげ、環境の悪化が、この時代の人権に対する最大の課題になると述べていました。
10月8日、人権理事会はまた、安全で清潔、健康で持続可能な環境を人権と認める決議を採択しました。当初、米国や英国などが反対していると報道されていましたが、英国は決議に賛成し(現在、米国は人権理事会の理事国ではない)、反対はなく、賛成43カ国、棄権4カ国(中国、インド、日本、ロシア)で採択されました。決議は、155カ国以上において健康的な環境の権利がすでに国際的に合意され、憲法や法律、政策で認められていることをあげ、各国に、他国、国際機関、市民社会、経済界などステークホルダーと協力してこの権利の実施に取り組むことを促しています。
また同日、人権理事会は、気候変動の文脈における人権の保護促進に関する特別報告者を任命することを決議しました。理事会は、気候変動が直接的・間接的に経済、社会、文化や環境に悪影響を及ぼし、その影響は世界中におよぶが、特に発展途上国や低開発国におよび、女性、子ども、貧しい人、障害のある人、マイノリティなどに大きな影響を与えることを指摘しています。特別報告者は、災害を含む気候変動の人権に対する影響を調査し、気候変動対策や法律などにおける人権の観点の強化によりそのような影響にどのように対応できるのか、気候変動の緩和や適応策、そのための投資における人権の保護促進などに関する提言を行うことが要請されています。
また、人権理事会諮問委員会に、特別報告者と協力して、環境保護のための新しい技術が人権の享受に対してどのように影響するかについて調査を行うよう要請しました。
バチェレ人権高等弁務官は、理事会が初めて環境の権利を人権と認めた敢行を称え、各国に自然と人々を守るための大胆な行動を呼びかけました。
日本が棄権した理由について、毎日新聞の取材によると、外務省人権人道課は「環境権という概念が国際人権法上、確立した権利として認められていない」、「決議案に盛り込まれた権利は極めて広範な内容を含み、意味が明確でない」、「日本として、ふわふわとした段階にある権利を認める方向にかじを切るまでには至っていない」と説明しています。
(構成・岡田仁子)
<出典>
Bachelet hails landmark recognition that having a healthy environment is a human right(OHCHR、10月8日)
Human Rights Council adopts four resolutions on the right to development, human rights and indigenous peoples, the human rights implications of the COVID-19 pandemic on young people, and the human right to a safe, clean, healthy and sustainable environment(OHCHR、10月8日)
Human Rights Council appoints a Special Rapporteur on the protection of human rights in the context of climate change and a Special Rapporteur to monitor the situation of human rights in Burundi(OHCHR、10月8日)
清潔な環境は「基本的人権」との国連決議 日本はなぜ棄権したのか(毎日新聞 2021年10月12日)