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国連人権理事会第48会期(9月13日~10月8日)、アフガニスタンなどについて決議
国連人権理事会の第48会期が2021年9月13日から10月10日まで開催され、アフガニスタン、シリア、南スーダンなどの人権状況や環境の権利などの決議が採択されました。
会期開催にあたり、バチェレ国連人権高等弁務官は、最新の人権状況として、気候変動と環境、アフガニスタン、スリランカ、ベネズエラなど各地の人権状況、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックなどについて報告しました。
アフガニスタンの状況
アフガニスタンについては、8月24日に人権理事会の特別会期が開催され、アフガニスタンの人権状況について重大な懸念を表明し、全ての紛争当事者に対して暴力を停止し、国際人権法と国際人道法上の義務の実施を求めることが決議されていました。バチェレ人権高等弁務官は、その後アフガニスタンの前政権下の公務員などの拘束や殺害が報告されていること、前政権の公務員や協力者の探索が行われていること、女性担当省が解体されたことなど、状況が悪化していると報告しました。
人権理事会は、アフガニスタンにおけるあらゆる人権侵害と国際人道法違反行為の停止と人権尊重を呼びかけ、女性および少女に対する差別や暴力を非難する決議を採択しました。決議では、同国の人権状況について報告し、アフガニスタンの国際条約上の人権義務を果たすことを支援し、市民への支援提供などの任務を負う1年任期の特別報告者を設置することを決めました。
ミャンマーの状況
今会期、ミャンマーの人権状況に関する特別報告者が人権理事会と対話を行いました。特別報告者は、2021年2月1日から1,100人以上が国軍に殺害され、8,000人以上が恣意的に拘束されており、軍事政権には人道に対する罪の強い疑いがあると報告しました。人権高等弁務官もミャンマーの状況についての報告書を提出し、軍事政権による国際人権法と国際人道法の深刻な侵害は、人道に対する罪、また武力紛争の中で行われた侵害は、戦争犯罪に当たりかねないことを指摘しています。
COVID-19と人権
会期中、人権理事会はCOVID-19パンデミックによって悪化する不平等に関するパネル・ディスカッションを開催しました。その中で、人権高等弁務官はパンデミックにより、極度の貧困がこの20 年間で初めて拡大し、女性の平等、民族や宗教的マイノリティ、先住民族の権利が後退していると指摘しました。そして、より安全で強靭な社会のために、あらゆる意思決定過程に人権を取り入れること、国家が共同で行動することを呼びかけました。
人権理事会は、若者に対するCOVID-19の影響について、若者、特に若い女性および少女の労働、教育や健康の権利の享受において、COVID-19が不均衡な影響を与えていることを認識し、各国に若者組織やステークホルダーとの包摂的で参加型の協議の上で若者のための政策を実施することを求める決議を採択しました。決議はまた、人権高等弁務官に対して、若者についてパンデミックの人権への影響を緩和する方法やパンデミックの社会での人権の実現に対する若者の寄与について調査するよう要請しています。
「ダーバン会議」のフォローアップ
2021年は「ダーバン反人種主義・差別撤廃世界会議」の20周年にあたることから、国連総会で記念行事を行うための会合が9月22日に開催されました。人権理事会は、人種主義・人種差別・外国人排斥などに対する具体的行動を呼びかける決議を採択しました。決議は、人権高等弁務官事務所に、人種差別撤廃条約や「ダーバン宣言」と「行動計画」の内容を含む、人種間の平等に関する啓発、および人々が人種間の平等を支持するよう2年間の広報戦略を開始することを要請しています。さらに、人権理事会諮問委員会に対して、人種差別をもたらす政策や過程について調査し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に基盤を置いた人種間の正義と平等の促進に関して提言を行うよう求めています。
その他の決議
特別手続きや人権保障メカニズムに情報提供するなど人権理事会に協力している人権活動家やNGOに対して、国家によって脅迫や報復が行われるという懸念がこれまで人権理事会や総会で表明されてきました。今会期でも、国連機関に協力した人が拘束され、拷問や殺害されたという事例や、国連の会合で発言したジャーナリストがSNSで攻撃されたケースなどが国連事務総長報告でとりあげられました。人権理事会は、オンライン・オフライン両方において、国連諸機関と協力した、またはしようと試みた人に対する脅迫や報復行為を非難し、各国にそのような行為を防止するあらゆる措置をとるとともに、国連の人権手続きにアクセスすることを可能にする法律や政策をつくることなどを促す決議を採択しました。
人権理事会はそのほか、環境の権利、気候変動と人権、開発の権利、死刑などの決議を採択しました。
(構成・岡田仁子)
<出典>
Human Rights Council Concludes Forty-eighth Regular Session after Adopting 25 Resolutions and One Statement by the President (国連人権高等弁務官事務所、10月11日)
<参照>
ダーバン会議の「宣言」「行動計画」の全文翻訳(ヒューライツ大阪)