MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. ニュース・イン・ブリーフ
  4. 世界人口の99%が収入の減少を経験した一方で、世界で最も豊かな10人の男性はパンデミックで資産を2倍に 26時間に1人、新たな億万長者が誕生する一方、不平等が原因で4秒に1人が命を落としている

ニュース・イン・ブリーフ サイト内検索

 

Powered by Google


ニュース・イン・ブリーフ Archives


世界人口の99%が収入の減少を経験した一方で、世界で最も豊かな10人の男性はパンデミックで資産を2倍に 26時間に1人、新たな億万長者が誕生する一方、不平等が原因で4秒に1人が命を落としている

(OXFAM International Press releases 公開日:2022117日)


 世界で最も裕福な10人の男性は、世界人口の99%の収入が減少し、さらに16000万人以上が貧困に追いやられたパンデミックの2年間で、資産を7,000億ドルから1.5兆ドル(1秒あたり15,000ドルまたは1日あたり13億ドル)に倍増させた。

 「例え、彼ら10人が明日その富を99.999%失ったとしても、依然としてこの地球上の99%の人々より裕福でしょう。」オックスファム・インターナショナルの事務局長、ガブリエラ・ブッハーは語る。「現時点で彼らは、最貧困層31億人の総資産の6倍の富を所有しています。」

 世界経済フォーラムの会議であるダボス・アジェンダに先立ち、オックスファムは2022117日に、報告書「不平等に殺される(Inequality Kills)」を公表した。報告書は、不平等により、毎日少なくとも21,000人、4秒に1人が死に追いやられていると述べる。これでも医療アクセスの欠如、ジェンダーに基づく暴力、飢餓、気候崩壊により世界各地で奪われている命に関する控えめに見積もった数字だ。

 「今ほど、この非常識な不平等という暴力的な大罪を正すために、課税という手段を含めてエリートの権力、そして極端な富を取り戻すことが重要であったことはありません。その資産を実体経済に戻し、人々の命を救いましょう」とブッハーは言う。

 コロナ禍以後、超富裕層の富は5兆ドル増加した。これは、それ以前の14年間で増加した超富裕層の富の合計よりも多く、超富裕層の富の増加率は統計史上最大となった。10人の金持ちがパンデミックで棚ぼた式に儲けた資産にたった一度、99%の税金をかけるだけで、例えば次のようなことが可能になる。

  • 世界中にワクチンを行き渡らせる。
  • 80カ国以上で、ユニバーサルヘルスケアと社会的保護を提供し、気候危機への適応策に資金を拠出し、ジェンダーに基づく暴力を削減する。
  • そして、これらすべてを実施しても、富豪達はパンデミック以後に儲けた80億ドルを手元に残すことが出来る

 ブッハーは続ける。「超富裕層は実に素晴らしいパンデミックを経験しました。中央銀行は経済を守るため何兆ドルをも金融市場に供給しましたが、それは株式市場ブームに沸いている超富裕層の懐に入りました。ワクチンはパンデミックを収束させるためにつくられるべきものですが、先進国政府は製薬業界のトップと独占企業が何十億もの人々を疎外するのを黙認しました。結果として、考え得るあらゆる種類の不平等リスクが上昇しました。それがあまりに簡単に予測可能なことには、うんざりさせられます。その結果、命が奪われます。

 極端な不平等は経済的暴力の一種だ。特権を持つごく少数の人々の富と権力を永続させる政策と政治的決定は、世界中の大多数の一般市民と地球そのものに直接的な害をもたらす。

 「パンデミックにおいて、この経済的暴力は特に、人種差別の対象となる人々、疎外された人々、ジェンダーに基づく差別を受けている人々に深刻な影響を与えました。新型コロナウイルス感染が急増するにつれ、ジェンダーに基づく暴力も急増しました。さらに、より多くの無償ケア労働が女性と少女に押しつけられました」とブッハーは述べる。

  • パンデミックにより、ジェンダー間の完全な平等を達成するまでの推計年数は、99年から135年に逆行した。女性全体で、2020年に8000億ドルの収入が失われ、2019年に比べると、仕事に就いている女性の数は、1,300万人減少した。252人の男性が、アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ海地域の全10億人の女性と少女よりも多くの富を保有している。
  • パンデミックの被害を最も過酷に受けたのは人種差別の対象となる人達だ。イングランドでのパンデミック第2波の間、バングラデシュ系の人々の新型コロナウイルスによる死亡率は、白人のイギリス人の5倍以上だった。ブラジルの黒人は白人よりも新型コロナウイルスで死亡する可能性が5倍以上高いと考えられている。米国では、もし黒人の平均寿命が白人と同じであれば、今日、340万人の黒人がまだこの世に存在しているだろう。これは、歴史的な人種差別や植民地主義に直結している問題である。
  • 国家間の不平等は、近年初めて拡大すると予想されている。豊かな政府が製薬会社の独占を保護しているために、発展途上国は十分な量のワクチンを確保できない。発展途上国は債務水準が悪化したために公的社会支出の削減を余儀なくされており、緊縮財政策を取らざるを得なくなっている。新型コロナウイルス感染者の死亡率は、発展途上国では先進国の約2倍になる。

 「パンデミックは、金持ちや大企業の貪欲性と、彼らが政治的経済的手段によって手にしている機会を白日の下にさらしました。それらによって、極端な不平等は経済的暴力の手段になりました」とブッハーは述べる。「長年にわたり、この問題に関する調査とキャンペーンを行ってきた結果として、ショッキングではありますが、オックスファムとしては、このように結論づけざるを得ません。」

 コロナ対策には多額の予算が必要であるにもかかわらず、豊かな国の政府はこの2年間、超富裕層に増税することはせず、ワクチン技術などの公共財を私企業の手に委ねてきた。政府が企業の独占を後押ししてきた結果、パンデミック期間だけで、1年間の市場集中度の増加率が、2000年から2015年の15年間よりも大きくなるのではないかと危惧されている。

 不平等は気候危機とも深く関係している。最富裕層1%は、資産保有という観点での世界の下位半数の人たちの2倍以上のCO2を排出しており、2020年から2021年にかけて気候変動は、山火事、洪水、竜巻、作物の不作、飢餓を引き起こした。

 「猛烈な速度と規模で発生している不平等は偶然ではなく、選択の結果です」とブッハーは言う。「現代の経済構造は、私たちをパンデミックに対して脆弱にしただけでなく、すでに富も権力も持っていた人々が、自分たちの利益のためにこの危機を利用することを積極的に支えました。」

 報告書は、世界の2大経済大国である米国と中国が、富裕層に高い税率を課し、独占に対して行動を起こすなど、不平等を改善する政策を検討し始めていることの重要性を指摘している。ブッハーは「これにより、新たな経済的合意が形成されるという、少しばかりの希望が生まれます」と述べる。

 オックスファムは各国政府に、次のことを緊急に提言する。

  • 富と資本に対する恒久的な課税制度をつくる。パンデミック以来、蓄積された莫大な富に課税することで、超富裕層にもたらされた利益を取り戻すことができる。
  • この課税によって徴収する数兆ドルを、ユニバーサルヘルスケアと社会的保護、気候変動への適応、ジェンダーに基づく暴力の防止とそのためのプログラム実施を進めるために投資する。
  • 女性や人種差別の対象となってきた人たちに対する差別的な法律の改正に取り組み、また、暴力と差別を根絶するための新しいジェンダー平等法を制定する。女性、人種差別や他の抑圧の対象となるグループが、すべての意思決定過程への参加を保障される政策が早急に策定されるよう、社会のあらゆるセクターが取り組まなければならない。
  • 労働者の団結権と争議権を侵害する法律を撤廃し、労働者を保護する、より強力な法的基準を導入する。
  • より多くの国が安全で効果的なワクチンを生産しパンデミックに終止符を打つため、先進国政府は新型コロナウイルスのワクチン技術に対する知的財産規定の適用を除外するべきである。

 ブッハーは、最後にこう締めくくった。「資金が足りないわけではありません。それが嘘だということは、パンデミック対策のために政府が16兆ドルを支出したときに証明されました。失敗しているにもかかわらず私たちをがんじがらめに縛っている行き過ぎた新自由主義から脱出するために、勇気と想像力が欠けているだけです。各国政府は、若い環境活動家、BLMBlack Lives Matter)活動家、# NiUnaMenos(ニ・ウナ・メノス)に関わっているフェミニスト、インドの農民など、正義と平等を要求する運動に耳を傾けるべきでしょう。」


(原文:https://www.oxfam.org/en/press-releases/ten-richest-men-double-their-fortunes-pandemic-while-incomes-99-percent-humanity) 

                            (翻訳:東海林 初音)


注:# NiUnaMenosは、2015年にアルゼンチンで始まり南米各国に拡がった女性に対する暴力に反対する運動。

(2022年04月15日 掲載)