(OXFAM International Press releases 公開日:2022年1月17日)
世界で最も裕福な10人の男性は、世界人口の99%の収入が減少し、さらに1億6000万人以上が貧困に追いやられたパンデミックの2年間で、資産を7,000億ドルから1.5兆ドル(1秒あたり15,000ドルまたは1日あたり13億ドル)に倍増させた。
「例え、彼ら10人が明日その富を99.999%失ったとしても、依然としてこの地球上の99%の人々より裕福でしょう。」オックスファム・インターナショナルの事務局長、ガブリエラ・ブッハーは語る。「現時点で彼らは、最貧困層31億人の総資産の6倍の富を所有しています。」
世界経済フォーラムの会議であるダボス・アジェンダに先立ち、オックスファムは2022年1月17日に、報告書「不平等に殺される(Inequality Kills)」を公表した。報告書は、不平等により、毎日少なくとも21,000人、4秒に1人が死に追いやられていると述べる。これでも医療アクセスの欠如、ジェンダーに基づく暴力、飢餓、気候崩壊により世界各地で奪われている命に関する控えめに見積もった数字だ。
「今ほど、この非常識な不平等という暴力的な大罪を正すために、課税という手段を含めてエリートの権力、そして極端な富を取り戻すことが重要であったことはありません。その資産を実体経済に戻し、人々の命を救いましょう」とブッハーは言う。
コロナ禍以後、超富裕層の富は5兆ドル増加した。これは、それ以前の14年間で増加した超富裕層の富の合計よりも多く、超富裕層の富の増加率は統計史上最大となった。10人の金持ちがパンデミックで棚ぼた式に儲けた資産にたった一度、99%の税金をかけるだけで、例えば次のようなことが可能になる。
ブッハーは続ける。「超富裕層は実に素晴らしいパンデミックを経験しました。中央銀行は経済を守るため何兆ドルをも金融市場に供給しましたが、それは株式市場ブームに沸いている超富裕層の懐に入りました。ワクチンはパンデミックを収束させるためにつくられるべきものですが、先進国政府は製薬業界のトップと独占企業が何十億もの人々を疎外するのを黙認しました。結果として、考え得るあらゆる種類の不平等リスクが上昇しました。それがあまりに簡単に予測可能なことには、うんざりさせられます。その結果、命が奪われます。
極端な不平等は経済的暴力の一種だ。特権を持つごく少数の人々の富と権力を永続させる政策と政治的決定は、世界中の大多数の一般市民と地球そのものに直接的な害をもたらす。
「パンデミックにおいて、この経済的暴力は特に、人種差別の対象となる人々、疎外された人々、ジェンダーに基づく差別を受けている人々に深刻な影響を与えました。新型コロナウイルス感染が急増するにつれ、ジェンダーに基づく暴力も急増しました。さらに、より多くの無償ケア労働が女性と少女に押しつけられました」とブッハーは述べる。
「パンデミックは、金持ちや大企業の貪欲性と、彼らが政治的経済的手段によって手にしている機会を白日の下にさらしました。それらによって、極端な不平等は経済的暴力の手段になりました」とブッハーは述べる。「長年にわたり、この問題に関する調査とキャンペーンを行ってきた結果として、ショッキングではありますが、オックスファムとしては、このように結論づけざるを得ません。」
コロナ対策には多額の予算が必要であるにもかかわらず、豊かな国の政府はこの2年間、超富裕層に増税することはせず、ワクチン技術などの公共財を私企業の手に委ねてきた。政府が企業の独占を後押ししてきた結果、パンデミック期間だけで、1年間の市場集中度の増加率が、2000年から2015年の15年間よりも大きくなるのではないかと危惧されている。
不平等は気候危機とも深く関係している。最富裕層1%は、資産保有という観点での世界の下位半数の人たちの2倍以上のCO2を排出しており、2020年から2021年にかけて気候変動は、山火事、洪水、竜巻、作物の不作、飢餓を引き起こした。
「猛烈な速度と規模で発生している不平等は偶然ではなく、選択の結果です」とブッハーは言う。「現代の経済構造は、私たちをパンデミックに対して脆弱にしただけでなく、すでに富も権力も持っていた人々が、自分たちの利益のためにこの危機を利用することを積極的に支えました。」
報告書は、世界の2大経済大国である米国と中国が、富裕層に高い税率を課し、独占に対して行動を起こすなど、不平等を改善する政策を検討し始めていることの重要性を指摘している。ブッハーは「これにより、新たな経済的合意が形成されるという、少しばかりの希望が生まれます」と述べる。
オックスファムは各国政府に、次のことを緊急に提言する。
ブッハーは、最後にこう締めくくった。「資金が足りないわけではありません。それが嘘だということは、パンデミック対策のために政府が16兆ドルを支出したときに証明されました。失敗しているにもかかわらず私たちをがんじがらめに縛っている行き過ぎた新自由主義から脱出するために、勇気と想像力が欠けているだけです。各国政府は、若い環境活動家、BLM(Black Lives Matter)活動家、# NiUnaMenos(ニ・ウナ・メノス)に関わっているフェミニスト、インドの農民など、正義と平等を要求する運動に耳を傾けるべきでしょう。」
(翻訳:東海林 初音)
注:# NiUnaMenosは、2015年にアルゼンチンで始まり南米各国に拡がった女性に対する暴力に反対する運動。
(2022年04月15日 掲載)